Cars

29歳、フェラーリを買う──Vol.105 新型ポルトフィーノMに憧れる

『GQ JAPAN』の編集者・イナガキ(29歳)が、ひょんなことから中古のフェラーリを購入した! 勢いで買ってしまったフェラーリのある生活とは? 今回は、新型「ポルトフィーノM」に乗ったお話。
フェラーリ FERRARI ポルトフィーノM PORTFINO M 360モデナ 360modena カリフォルニア カリフォルニアT オープンカー
Hiromitsu Yasui

幸運にもポルトフィーノMに乗る機会を得ました

5月上旬、フェラーリの新型4シーター・オープン「ポルトフィーノM」を取材した。360モデナに乗るボクとしては、エンジンの搭載位置や定員こそ違うものの、やっぱり最新のフェラーリは気になる。

【前話】Vol.104 冷たい風が欲しい!

しかし、ボクは撮影の都合でほかのクルマを運転しなけなければならず、ポルトフィーノMは運転しない予定だった。

撮影中、なぜかフェラーリ・ジャパンの広報部から電話が掛かってきた。

「試乗枠にキャンセルが出たので、イナガキさん、このあとポルトフィーノMに乗りませんか?」

ためらうことなく、すぐに「乗ります!」と、答えたのは言うまでもない。
Vol.101 女優・夏樹陽子さんとの再会(後編)
Vol.100 女優・夏樹陽子さんとの再会(前編)

電動格納式メタルトップが特徴のポルトフィーノMは、2017年に登場したポルトフィーノの進化版である。もとを辿れば「カリフォルニアT」や「カリフォルニア」に行き着く。

Hiromitsu Yasui

ただし、次の取材もあるため試乗時間はわずか20〜30分。発着地点である横浜みなとみらい21地区周辺をドライブするしかない。

発着地点であるザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜に戻り、試乗車を受け取る。見覚えのあるボディカラーだなぁ、と、思いきや、なんとわが360モデナとおなじ「ブルー・ツール・ド・フランス」だった。なんたる偶然……。
Vol.103 トラブルは気まぐれ
Vol.102 トラブルかも!?

エンジンのスタート/ストップ用スウィッチは、ステアリング・ホイールにある。

Hiromitsu Yasui

エンジンをかけるべく、ステアリング・ホイールにある赤いスウィッチを押す。イマドキのフェラーリは、イグニッション・キーをまわす必要はないのだ。

“ブォン”というけたたましいサウンドとともにフロントに搭載されたV型8気筒ガソリンターボ・エンジンが目覚める。ふだん、背後から聞こえるエンジン・サウンドが、前方から聞こえるのは新鮮だ。
Vol.55 いざ、新車フェラーリの商談へ!
Vol.54 ローマの購入を真剣に考える

新しいパワートレインは、4人乗りクーペモデルの「ローマ」ゆずりだ。3855ccのV型8気筒ガソリンツインターボで、最高出力は620ps、最大トルクは760Nmを発揮する。従来のポルトフィーノより最高出力は20ps向上した。

Hiromitsu Yasui

せっかくなので電動開閉式のリトラクタブル・ハードトップを開けて走ろう! と、思い、センターコンソールにあるスウィッチを押した。すると、驚くほどスムーズにハードトップがリアに格納されていく。ぎこちない動きは一切ない。信頼性は高そうだ。

もっとも、ポルトフィーノMに限らず、前身の「ポルトフィーノ」や「カリフォルニア」も電動開閉システムの信頼性は高く、滅多にトラブルは発生しないと、まえにフェラーリ横浜サービス・センターで聴いた。もしトラブルが発生しても、今のフェラーリは保証がしっかりしているので、ほとんどの場合、修理にかんする費用はメーカー負担になるので安心すべし。

リトラクタブルルーフの開閉時間は約14秒。折りたたまれたルーフは、リアに格納される。

Hiromitsu Yasui

開閉用スウィッチはセンターコンソールにある。

Hiromitsu Yasui

実用性の高さにうっとり

ハードトップを格納し、いざ、ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜を出発した。この日は、日差しが若干強かったものの、試乗車のシートはオプションのベンチレーション機構付きだったので快適だった。
Vol.92 事故の続きと驚きの方向へ
Vol.91 愛車をぶつけました

ステアリング・スポーク上に配置されるウインカー・スウィッチには何度乗ってもなれないが、ほかの操作類は自然になじむ。電動調整式のシートとステアリング・コラムは調整幅が大きいので、身長168cmの小柄なボクでも最適なドライビング・ポジションにセッティング出来たし、インフォテインメント・システムの操作性も良好だ。試乗車は本国仕様だったため、日本向けのカーナビゲーション・システムは非搭載だったが、スマートフォンとの連携機能によってApple CarPlayは使えた。

ヘッドレスト下部から温風が出る「ネックウォーマー」もオプションで装着出来る。

Hiromitsu Yasui

シート・ベンチレーション機構は、インフォテインメント用モニターで調整出来る。

Hiromitsu Yasui

強力なエアコンは、左右独立調整式。

Hiromitsu Yasui

試乗車はスマートフォン連携機能付きだったため、モニターにGoogle Mapを表示出来た。

Hiromitsu Yasui

荷物はリアシートに置けばいいし、ラゲッジルームにもしまえる。ハードトップを格納しても、大型スーツケースが1個なら入りそう。

センターコンソールにカップホルダーがあるのも嬉しい。わが360モデナにはカップホルダーがない。使い勝手は、驚くほどよい。ポルトフィーノM1台のみでも日々の生活は困らなさそう。

インテリアはタンとブラックの2トーン。助手席前のダッシュボードにはポルトフィーノMのエンブレム付き。

Hiromitsu Yasui

リアシートはふたりがけ。バックレストは可倒式で、トランクスルー機構付きだ。

Hiromitsu Yasui

センターコンソールにはカップホルダー(1個)が付く。

Hiromitsu Yasui

グラヴボックスは車検証などを入れるのに最適な容量だ。

Hiromitsu Yasui

ラゲッジルーム容量は最大292リッター。

Hiromitsu Yasui

ルーフを格納した状態のラゲッジルーム。大型のスーツケースも1個なら積めそうだ。

Hiromitsu Yasui

交通量の多い夕方のヨコハマでは、アクセルを深く踏み込める場面はほぼない。せっかくなので、お気に入りのAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)のナンバーを流すと、想像以上に臨場感あふれる音がスピーカーから流れてくるではないか! 

よーく、スピーカーを見ると、そこには「JBL」のロゴが。試乗車はオプションのプレミアム・サウンド・システム搭載車だった。「GTC4ルッソ」などに純正のJBL製オーディオ・システムの素晴らしさを体感済みだったが、ルーフを格納しても、臨場感あふれる音を楽しめるのは意外だった。きっと緻密なチューニングを施したに違いない。
Vol.43 ドアがロックされない!後編
Vol.42 ドアがロックされない!前編

Apple CarPlayを介し、スマートフォン内の音楽を流せる。

Hiromitsu Yasui

JBLのプレミアム・サウンド・システムはオプション。

Hiromitsu Yasui

ポルトフィーノMでヨコハマ・ドライブ

とりあえず、元町を目指す。子どものころ野毛山(横浜市西区)に住んでいたので土地勘はあるけれど、屋根を開けて走ると、あらためて横浜の変貌に驚く。

横浜みなとみらい21地区にはむかしは、ランドマークタワーと横浜銀行の本店、よこはまコスモワールド、ヨコハマ・グランド・インターコンチネンタル・ホテル、パシフィコ横浜ぐらいしかなかった。それが今やタワーマンションが建ち並び、横浜アンパンマンこどもミュージアムまであるのだ。

山下町に本店を置く老舗の洋菓子店「横浜かをり」にて。

Hiromitsu Yasui

野毛山公園に沿って続く野毛坂にて。

Hiromitsu Yasui

走り出すと頭上には見慣れぬロープウェイが! これは4月22日から運行が始まった日本初の都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」だ。しばし、ポルトフィーノMのドライバーズ・シートからロープウェイを見上げる。オープン・カーだからこその醍醐味だ。

以前、ボクはボルボ「C70」をはじめオープンカーを3台乗り継いだことがある。しかし、いつの日か屋根を開けることへの興味が急激に冷めてしまい、以降、オープンカーと無縁の生活を送っていた。

ボクとボルボの思い出──極上の240ワゴンに乗って考えたボルボの魅力とは?

ポルトフィーノMの頭上を行き交うのは日本初の都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」。

Hiromitsu Yasui

そんなボクに、最新のポルトフィーノMは、オープン・カーの魅力をあらためて教えてくれたのだ。素晴らしいエンジン・サウンドが、よりダイレクトに聴こえるのも大きな魅力である。

横浜元町ショッピングストリートの石畳では、ポルトフィーノMの快適性を再認識。とにかく乗り心地が良い! 路面の凹凸をしなやかにこなしていく。

もとまちユニオン前にて。

Hiromitsu Yasui

取りまわしの良さにも感動した。試乗車は、オプションの360°カメラを搭載していたから、縦列駐車も楽チン。カメラ映像が鮮明に表示されるので、幅寄せも不安なく出来た。後方視界がよくないうえにバックカメラ非搭載のわが360モデナだったら躊躇するようなスペースにでも、一発で停められた。

乗り心地がよく、使い勝手に優れ、爽やかなオープン・ドライブが楽しめるポルトフィーノMは、ローマとともに次期愛車候補にくわわった。が、ネックになるのは価格。新車価格で2737万円である。おいそれと購入出来るクルマではない。

360°カメラは周囲の状況を鮮明に映し出す。

Hiromitsu Yasui

縦列駐車も楽チンだった。

Hiromitsu Yasui

「いつか欲しいなぁ」と、思いつつ、横浜山手の「ブリキのおもちゃ博物館」近くを走る。そういえば以前、館長の北原照久さんにお会いしたとき、「願いはずっと思い続けていればいつか叶うよ」と、話していたのを思い出した。そうか、ボクも、「ポルトフィーノM(とローマ)が欲しい!」と願い続けていれば、いつか現実になるかもしれない。

理想は360モデナと最新フェラーリとの複数台生活! いまはまったく想像出来ないけれど、いつが現実になる日を楽しみに、前向きに生きていこう。

横浜山手にある「ブリキのおもちゃ博物館」は1986年に開館した。

Hiromitsu Yasui

あ、でも早くしないとフェラーリも電動化が進んでしまい、いまとはまったく異なるクルマになっているかも……時間はあまりないかいもしれない(汗)。

とにかく最新フェラーリを目標に、前進あるのみ!

みなとみらいにて。

Hiromitsu Yasui

『29歳、フェラーリを買う』直近記事
Vol.104 冷たい風が欲しい!
Vol.103 トラブルは気まぐれ
Vol.102 トラブルかも!?
Vol.101 女優・夏樹陽子さんとの再会(後編)
Vol.100 女優・夏樹陽子さんとの再会(前編)
Vol.99 施工するのはどこ!?
Vol.98 “SPPF”に注目!
Vol.97 愛車を守りたい!
Vol.96 春なのに
Vol.95 事故の決算書
Vol.94 保険協定の結果
Vol.93 修理金額判明
Vol.92 事故の続きと驚きの方向へ
Vol.91 愛車をぶつけました
Vol.90 UVERworld・真太郎さんとの出会い(後編)
Vol.89 UVERworld・真太郎さんとの出会い(前編)
Vol.88 フェラーリ・クラシケ取得は簡単に進まない!?
Vol.87 458スパイダーとの偶然の出会い
Vol.86 フェラーリの実燃費 Part.2
Vol.85 新型ポルトフィーノMも良いではないか!
Vol.84 ローマに乗る
Vol.83 2020年を振り返る
Vol.82 人生初のツーリングに参加
Vol.81 あるべき“穴”がない!
Vol.80 クラシケ取得費用に納得
Vol.79 スーパーカーとソーシャルメディア
Vol.78 愛車をイベントに展示しました(後編)
Vol.77 愛車をイベントに展示しました(中編)
Vol.76 愛車をイベントに展示しました(前編)
Vol.75 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その5
Vol.74 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その4
Vol.73 この夏、愛車に乗れませんでした
Vol.72 オウナーとの交流
Vol.71 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その3
Vol.70 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その2
Vol.69 フェラーリ・クラシケを取得するぞ! その1
Vol.68 トラブル発生!
Vol.67 ドライブレコーダーの装着
Vol.66 自動車保険の現実(後編)
Vol.65 自動車保険の現実(前編)
Vol.64 フェラーリのオフィス・チェア
Vol.63  F8トリブートのオウナーに会う!
Vol.62  トラブル発生!?
Vol.61  純正サスペンションを紛失!?
Vol.60  612スカリエッティのオウナーに会う
Vol.59  認定中古車で迷う(後編)
Vol.58  認定中古車で迷う(前編)
Vol.57 フェラーリ・オウナー専用のスマホ・アプリとは?
Vol.56 新車フェラーリの購入はいかに
Vol.55 いざ、新車フェラーリの商談へ!
Vol.54 ローマの購入を真剣に考える
Vol.53 1カ月半ぶりのドライブへ(後編)
Vol.52  1カ月半ぶりのドライブへ(前編)
Vol.51  月々2万円でフェラーリに乗れる!?
Vol.50 気になる車両価格と連載50回目
Vol.49  カスタマイズ費用の総額
Vol.48 ちょっと古いフェラーリのランニングコスト
Vol.47 愛車にしばらく乗りません!
Vol.46 外出自粛の今、愛車を楽しむ方法とは?
Vol.45 新型コロナウイルス問題でフェラーリの新車販売はどうなる!?
Vol.44 フェラーリでスキーに連れてって!
Vol.43 ドアがロックされない!後編
Vol.42 ドアがロックされない!前編
Vol.41 トラブル発生! ドアが開かない!?
Vol.40 超有名漫画家が360モデナを描き下ろす!
Vol.39 新車フェラーリを購入!?

文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)