このハイテク布、片面で温めて片面で冷やせます

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  • author ヤマダユウス型
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このハイテク布、片面で温めて片面で冷やせます
Image: Adapted from Nano Letters 2021, DOI: 10.1021/acs.nanolett.1c00400 via Gizmodo US

ほんとのほんとに夢の素材じゃないか…。

アウトドアで快適に過ごすには、服を重ねる(レイヤリング)のが一番。暑いときには服を脱ぎ、寒いときには服を重ねる。しかし、1枚の衣服で両方の機能を果たすことができたら? 科学者たちが期待しているのは、片面を加熱し、裏返すと冷却する新素材のエンジニアリングです。

週末のキャンプでは必要なものをバックパックに入れて持ち歩くことになりますが、そのバランスは簡単ではありません。どんな天候でも快適に過ごせるよう、かつバッグに詰め込みすぎないよう、十分な衣類を用意しなければなりません。そのために、The North FaceやColumbiaのような企業は、軽量でパッキングしやすく快適さも保てるウェアの研究開発に勤しんでいます。しかし、レイヤリングの代わりに、夜の冷え込みから日の出の暖かい朝へと移り変わるときに、背中のシャツを裏返して着ることができたらどうでしょう? これはアウトドア用品の聖杯のようなものですが、本当に実現するかもしれません。

中国のウェストレイク大学と浙江大学の科学者たちは、Nano Letters誌に掲載された論文の中で、多孔質の繊維状ポリマーで作られた生地を用いて、綿のように呼吸ができ(汗を蒸発させて逃がすことができる)、しかもそれ以上の機能を持つ新しいタイプのレイヤード・テキスタイルを開発したことを明らかにしました。テキスタイルの片面には亜鉛と銅のナノ粒子がコーティングされており、太陽エネルギーを取り込みつつ着用者が発する熱放射を体に向けて反射します。もう一方の面はその逆で、階層的に配置された多孔質構造(さまざまな大きさの孔が配置されている)を利用し、太陽の光を反射すると同時に人体からの熱を放射して発散させます

四角形に裁断したこのテキスタイルを、自然光の下でシミュレーションされた人間の肌に当てて加熱面を表にしてテストしたところ、単純な黒いコットンの正方形よりも基礎温度が14度華氏上昇したことがわかりました(TOP画像)。日光のない夜間でも、コットンに比べて5度の温度上昇が見られその効果が確認されました。さらに、このテキスタイルを裏返して太陽光の下で使用したところ、白のコットンに比べて肌の表面を11度も冷やすことができました。

この新しいテキスタイルはベースレイヤーやアンダーウェアに革命をもたらし、天候の変化に対応できるようになる可能性があります。いずれ、薄手のジャケットは風や雨から身を守るためだけに必要になるのかもしれません。Matrix社のバッテリーレス・スマートウォッチ「PowerWatch」が、肌と空気の温度差だけで電力供給できるのと同じように、この自己冷却&自己保温素材も熱電発電機に取り付ければ少量の電力を生み出します。もしこの素材が一般に販売されるようになれば、トレイルにおいて快適に過ごせるだけでなく、その過程でスマートフォンを充電することもできるかもしれませんね。

Source: Gizmodo US