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最強の電動自転車「MATE. BIKE」で、戦闘機のように東京を疾走した!──連載:GQ GEAR ガチテスト Vol.01

世界はプロダクトにあふれている。次から次へと現れる新製品、新サービスをGQの編集者&ライターが数日間にわたってテスト。実際にお金を払う価値があるかどうか、ガチでチェックします。こんかいはデンマークからやってきた電動アシスト自転車「Mate」を試練にかけた!
MATE X

MATE Xを日本で販売するMATE. BIKE JAPAN 代表の福井雄大さん。ヨーロッパでこの電動自転車を見て、一目惚れしたそう。

[PRODUCT]

MATE-X(MATE. BIKE)¥330,000 https://mate-bike.jp

デンマーク生まれの「MATE-X」は、フルサスペンションに内蔵バッテリーを装備し、さらに独自の配線技術によるワイヤリングなど、これまで日本にはなかったタイプのe-bike。いわく“最強の電動自転車”。全高✕全長✕全幅=124✕180✕65cm(折りたたみ時は、78✕103✕59cm)で、サイズはさほど大きくないが見た目はイカツく、幅4インチのふといタイヤもはいて印象はマッシヴ。しかし、デザインはシンプルだ。

【JUDGE】

ライターK:40代後半男性。普段は電動のスポーツ自転車を愛用。軽量で扱いやすいことは気に入っているが、航続距離が短いため、常に行き先の往復距離を計算しなければならない。

編集I:40代前半男性。子どもの送迎用の電動ママチャリを6年愛用している。

Mate Xは2m四方のエレベーターなら、ギリギリ入る。

警察官に止められた

K ごめん、遅くなって。

I  珍しいですね。Kさんが遅刻なんて。

K 井ノ頭通りで警察官に止められちゃってさ。

I  ホントですか? どうして?

K 「MATE-X」でスイスイ走っていたら、「これ自転車ですか?」って。バイクにノーヘルで乗っていると思ったんじゃないかな。しばらくジロジロ見てたけど、「自転車ですねー」と少し残念そうだった。

I   警察官の気持ちわかるなあ。こんなぶっといタイヤ(4インチ)の自転車、ほかにないですもんね。遠目からだとバイクにしか見えない。僕も初めて広尾の商店街で見たときはビビりましたもん。

K タイヤが太いからね。でも実際に乗ってみると、見た目ほどのごっついサイズ感はないよね?

I そうですね。ただデザインも独特ですし、都心を走っていると、かなりジロジロ見られます(笑)。

いかつさが増す、ブラックバージョン。33万円

速度、時間、バッテリー残量などが一目瞭然。

K 結構あちこち乗ってみた?

I   都内は結構走りましたね。広尾からぼくの実家がある荻窪まで約45分間。距離にして約13.8kmなので、平均時速は19km/h。ちょっと混んでいると、クルマなら1時間かかりますから、かなり早く着いた感じがしました。驚きました。

K ずっと幹線道路?

I  明治通り、旧山手通り、井の頭通り、環七、青梅街道って感じですね。途中で住宅街も走りましたが、早すぎて歩行者とすれ違うのが怖いくらい。アシストがかなり強力なので、幹線道路の車道をクルマやバイクと並走するほうが安心できます。

K 僕も代々木から吉祥寺まで行ったけど、30分かからなかった。距離は約12kmなので、平均時速は20km超えていたんじゃないかな。それでもまったく疲れは感じなかったけど。

I 銀座から渋谷のおよそ6.9kmも30分間くらいでしたね。ドア・ツー・ドアなら地下鉄より速い。赤坂あたりの勾配もまったく気になりませんでした。

K 平坦な道が下り坂に感じて、少々の上り坂でも平坦に感じる。だからどこまでやれるんだろうと思って、都内の有名な急坂を巡ってみようと思って。

I いろいろ有名なところありますね。

K 目白の胸突坂(勾配22%)とか、目黒の行人坂(20%)、品川のまぼろし坂(29%)……。結論からいうと、MATE-Xの圧倒的勝利。通行人が息切れして登っているところを、シートに座ったままスイスイ登っていった。自分の足でこいでいるんだけど、重力に反して進んでいくような不思議な感覚だった。

I 僕は普段、子どもを送迎するための電動アシスト自転車に乗っているんですが、第6世代ジェット戦闘機とターボプロップ機くらいの差を感じました。現在のステータスともいえる、電気容量がわかる小型ディスプレイもありますしね。電装系の進化がちゃんと入っている。そして速度はといえば、そこらの電動自転車をガンガン撃ち落とす勢い。

シマノのアトラスは8段ギア。MTBなどでよく使われるコンポーネントだ。

パワーユニット。出力は250Wと750W(普通自動二輪免許が必要)がある。

K 自動車でいえば、20年前の軽自動車から最新のSUVに乗り換えたぐらいの感じかな。パワーが桁違い。サスペンションもいいから悪路もまったく気にならない。

I コンボーネンツはかなり優秀ですね。シマノのALTUSシリーズを搭載していて、ギア8速でスパスパ入るし、軽い。すぐにトップスピードに乗る。フレームの剛性感やコーナリング時の抑え込む感じもふくめて、絶対感動します。折りたたみは試してみました?

K やってみたよ。クルマに積んでみようと思ったけど、折りたたんだ状態でもかなり大きい。それにもともと重い(28.5kg)。クルマも荷室が大型じゃないと、ちょっときびしいかも。

I 折りたたんで運ぶのが前提なら、小型の「MATE-CITY」のほうがいいでしょうね。見た目は普通の自転車ですし。アシストモーターはXのように強いといえますが、Xほどの刺激はさすがにありません。でも汎用性は高い。これにキッズキャリアなどあれば全国のお父さんにおすすめしたいです。

K 都内の“足”としては最強かもね。気をつけないと、どんどんスピードがでちゃうからむしろ気をつけて安全運転になる。早く走るというより、気持ちよく乗りたい自転車だと思った。

I たしかに最初は危ないと感じるくらいパワフルだし、スピードもでる。自転車の扱いに自信のないひとにはすすめらないかもしれません。カラダが硬すぎたり、週に1度も運動しない人では乗りこなせないかも。

K これで税抜き30万円。欲しい?

I 値段以上の楽しさを感じました。いま、資金集めに頭を悩ませています(笑)。

K 乗っちゃうと欲しくなるよね。自転車に30万円というと高く感じるけど、MATE-Xはもはや自転車を超えている。僕のなかでは自転車の進化系というよりは、バイクがエコに進化したイメージ。バッテリーもデカイから航続距離97kmというのもポイントが高い。ちょこちょこ充電する必要がないからね。そんなことを考えると、かなり“買い”。問題はちょっと大きな駐輪場が必要なことくらいかな(笑)

カスタム例。チェーンをゴールドカラーにし、より街乗りに特化したスリックタイアに換装した。37万4000円

[翌日]
I Kさん、大変です!

K どうしたの?

I 編集長がそんなにいい電動自転車なら都内だけでなく遠出してテストしてこいと……。

K 遠出って?

I 奥多摩とか秩父とか……。

K おお、ガチの遠出だねえ。どうせなら山に登れってことか。

I 箱根はどうですか? 箱根駅伝のコースを走ってみるのは。

K それは楽しそう! 半日で行けるかな。

I じゃあ、お願いします!

K あ、僕が行くのね……。

I すみません、僕がやりたいんですが、取材の予定が立て込んでいて。

K わかったよ、行ってくるよ。久しぶりに温泉でも入ってくるわ。

【次回、ライターKが山の神になる!? Mate Xで“箱根駅伝”コースを走る!(近日公開)】

文・川上康介