LIFESTYLE / Culture & Life

経年変化を楽しむアパルトマン風のワンルーム。【アートのある暮らし Vol.12】

アート写真がある暮らしを提案する連載企画第12回目。今回訪れたのは、色彩豊かなケータリングサービスを提供している古谷さんが暮らすワンルームのヴィンテージマンション。ヴィンテージの魅力は何といっても経年変化を楽しむこと。古い家具やドライフラワーが一層スローな時間を漂わせていた。

暮らし上手は、もてなし上手

バスルーム以外、壁はなく広々とした空間が広がる。

都心近くにある築40年以上のヴィンテージマンション。オーガニックフードを使ったケータリング「FLOW TOKYO」の主宰、古谷有海さんの自宅はここの一室だ。ほぼ真四角の部屋を仕切る壁はなく、広い空間が広がる。たくさんの花とアンティーク家具が散りばめられた部屋は、パリのアパルトマンのような趣き。

「自宅のキッチンもメニュー開発などに使用するので、きちんとした設備が入れられることが自宅選びの決め手のひとつ。ここはオーナーの方がとても理解があって基本的に何をしてもOKということだったので決めました」(古谷さん)

入って手前のキッチンは、まさにプロ仕様。そこからダイニングテーブルセット、ソファ、そしてベッドがそれぞれの場所に置かれる。壁はないものの、何となく用途別に家具の置き方や空間の使い方が工夫されていて、ゾーニングが完成している。

「広いワンルームに住みたかったんです。だからあえて仕切るようなものはないんですけど、ベッド周りだけはパーティションをしようかな、と。でもそれくらいです」

ダイニング、ソファ、キッチン、どこにいても花や写真、アンティークの椅子などでさりげなく装飾された美しい空間が広がる。「ケータリングの前は店をやっていたので、空間の中でどの位置からどう見えるかというのは今でも意識します。この家もそれは気にしながら家具の配置やプランターの置き場所を考えました」

家にテレビは置かず、映画などを見るときはプロジェクターで壁に投影するというスタイル。「テレビ、特に必要ないなと思って。この部屋は白い壁が広く取れるので、映画鑑賞には最適です」

プロの料理家の古谷さんは、プライベートでも家に友人達を招いてパーティーをするという。「ケータリングって持って行けるものという縛りがあるので、毎日仕事で料理をしていても、それ以上に“これも食べてもらいたい”って考えます。旬のものとか身体を温めるものとか。そういうのを人に食べてもらいたくて、人をよく呼びます。この家、結構大人数も入るんです」

そんなときゲストを楽しませるのは、お手製の料理はもちろんのこと、趣向凝らしたフラワーなどのデコレーション。時には写真を使うこともあるという。暮らし上手は、もてなし上手。そんな言葉がぴったりの住まいだ。

家中至るところに花があふれる古谷さん宅。色合い豊かな料理がさらに空間を彩る。
カラフルなフィンガーフードが多く並ぶテーブル。キッチンスペースもすべて繋がっていて動線もばっちり。

ドライフラワーとアンティーク家具

アンティークショップで購入したというレザーソファに一客づつ異なるアンティークの椅子。天井から吊るされたアイビーや背の高いプランターがフレッシュな空気を生み出している。

部屋に入ってすぐに目に留まる数々の花とグリーン。ボリュームたっぷりの花は、定期的に知人のフラワーショップから配送してもらっているとか。「どんなときも花を欠かしたことはないです。毎回たくさん届くので、家の色んな場所に、それぞれアレンジして飾っています。自然とドライフラワーになって、それもまた増えてきてしまって」

ドライフラワーは壁にスワッグのようにして吊るしたり、棚の上に飾ったり。アンティークの家具といい調和を生み出している。アンティークの家具は、国内のアンティークショップなどを巡って徐々に揃えたという。「どこの店というほど限定してないんです。通りすがりのお店や蚤の市なんかでも見つけたり。そうやって気づけば古いものばかり増えてたという感じです」

日当りの良い場所にあるアンティークソファでまどろむ愛犬リモ。
ダイニングテーブルの横のスペース。グラデーションが美しい絵画のような写真とフラワーアレンジでストーリー性を孕んで。
ドライフラワーやキャンドル、アロマオイルなどが置かれた棚。無造作に見えるのに、どこを切り取っても絵になる。

写真の在り方を超えた発想転換

写真を入れたフレームをトレイ代わりにするという発想転換は、瞬時にテーブルを華やかにする意外性あるアイデア。

頻繁に人を招くという古谷さん。撮影時もスタッフにパーティーメニューを振舞ってくれた。鮮やかな色合いでキュートなフィンガーフードは全てお手製。テーブルを彩るのはカラフルな料理と花、そして写真だ。「写真をボードに見立ててお料理やグラスを置いてみました。写真は壁に飾るものという概念を捨てて、こんな風に使うのも楽しいです。一枚あるだけでテーブルがぱっと華やぐし、ゲストが驚いてくれるのも嬉しい」

最近まで写真は飾っていなかったという古谷さんだが、友人の紹介でイエローコーナーの存在を知り、手軽にアートフォトを買えるということで数点トライ。「リーズナブルなので、季節によって変えたりできるのがいいなと思います。パーティーなどのテーマによって変えたり。写真は人との会話のきっかけにもなりますよね」

この日はお手製のフィンガーフードと合わせて、フォトフレームをトレイ代わりにというテーブルコーディネートを提案。一気にテーブルが華やいだ雰囲気になった。料理のプロならではのサプライズな発想は、来た人の気持ちをぐっと楽しいものにしてくれる。

野菜がふんだんに乗ったオープンサンド。ここにもエディブルフラワーをあしらって。
テーブルコーディネートともマッチした花と少女の写真はテーブルの脇に置いて。こちらもイエローコーナーで購入。

細部まで行き届いた趣向

ベッドが置かれたスペースにはパーテーションを置いて。

古谷さんの部屋は見事なまでに隙がない。といっても決して堅苦しいわけではなく、部屋の隅々にまで住み手である古谷さんの趣向が行き届いている。例えばバス&ドレッシングルーム。白を基調にリノベーションした空間には、ハンドソープなどの小物類も白系のものを。シンクの横に飾られたフラワーと写真がより一層映える。

ベッドのスペースはパーティションを上手く使ってプライベート感を。これもどこかのアンティークかと思いきや、意外にもロフトで見つけたものだとか。「偶然通りすがりに見つけて。コレだと思うものがあれば、お店はそんなにこだわらないんです」

FLOW TOKYO
http://www.flowtokyo.com

第1回:「写真で部屋を飾る生活、始めました」
第2回:「ハイ&ローが生むスタイル空間」
第3回:「名作品と共生した心地良い空間づくり」
第4回:「毎日が旅気分。非日常を味わうインテリア」
第5回:「古いモノと新しいモノが同居する部屋」
第6回:「好きなモノを好きな場所に。作品を飾るためのギャラリーハウス」
第7回:「インテリアのプロ夫妻が暮らす、クール&コンフォートな自宅」
第8回:「音楽を聴くように写真を飾る」
第9回:「目利きが暮らすミックススタイルの空間」
第10回:「エキゾチックなムードが漂うヴィンテージマンション」
第11回:「花と写真で彩るヴィヴィッドな邸宅」

鏡の前にもフラワーを。お気に入りのアンディ・ウォーホールの絵本やポスターとともに。
白を基調とした洗面台には、同色のフレームの鏡やボトルのハンドソープなど細かいところまでコーディネート。そこに置かれたフラワーアレンジと写真の色彩が映える。
窓辺に並べた椅子は、教会で使われていたアンティーク。脇にはお気に入りの写真集や絵本を積み、椅子の上には初夏を意識して涼しげな写真を。

Photo: Hiromi Asai Editor: Miki Ozawa