JASRAC、映画音楽の上映使用料を実質値上げ スクリーン数に応じた額に

    興行収入1〜2%の徴収とはならなかった。

    日本音楽著作権協会(JASRAC)は9月6日、外国映画における映画音楽の上映使用料について、これまでの定額制からスクリーン数に応じた6区分の使用料額に変更することを発表した。

    興行収入1〜2%の徴収を… これまでの流れをまとめる

    著作権法は上映権について「著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する」(22条の2)と定めており、「上映」には「映画の著作物において固定されている音を再生することを含む」(2条17項)。

    JASRACはこの条文を根拠に映画音楽の使用料について、映画館の全国組織である「全国興行生活衛生同業組合連合会(以下、全興連)」と契約を結んでおり、使用料は、配給会社が全興連を経由して支払っている。

    従来の契約では、外国映画は1本につき18万円の定額制になっており、JASRACは、映画がヒットしても一定額しか徴収できない現在の仕組みを問題視していた。

    そこで2017年11月、興行収入の1〜2%を徴収する仕組みを目指すことを明らかにした。

    また、これまで使用料は配給業者が支払っていたが、ヨーロッパ諸国と同様、劇場から直接徴収することも明らかにした。

    背景に欧米諸国からの要請、団体は反発

    この動きには欧米諸国からの強い要請も背景にあるという。

    昨年の記者会見で、JASRAC特別顧問で作曲家の都倉俊一氏は「日本の映画音楽の上映権は実にお粗末な金額で、『アナと雪の女王』も定額で十数万円。世界からバッシングを受けている」と発言。

    大橋健三常務理事(当時)も「もう10年以上前から海外の団体、特に欧州・アメリカの団体からは強く言われている。我々も待ったなしだというふうに思っている」と明かしていた。

    JASRACの方針が発表されてから、劇場側は反発。

    全興連は、「上映使用料は不当に低廉とはいえない」「(上映使用料として支払っている国は)欧州諸国を除いて、ほとんどありません」と反発する声明を出していた。

    ある映画館の支配人はBuzzFeed Newsに「影響は甚大。もしJASRACの言い分の通り1〜2%となれば、つぶれる映画館が出てきてもおかしくない。死活問題だ」と危機感を吐露していた。

    スクリーン数に応じた6区分の使用額に

    JASRACは6日の記者会見を開き、全興連と8月31日、合意が成立したと発表。

    江見浩一複製部部長は「引き続き、(使用料は)配給会社が全興連を経由して支払うことになるだろう」と話した。

    ウォルトディズニーや20世紀フォックスなど、外国メジャー配給映画の主要な外国映画の使用料について、以下の3点を合意したという。

    1. 2018年11月から2021年3月まで封切りとなる映画の使用料の算出方法については、封切り時のスクリーン数に応じた6区分の使用料額表にて行う
    2. 2021年4月以降に封切りとなる映画の使用料の算出方法については、曲別算定方式に準じた、楽曲別の利用規模を反映した使用料算定方式採用に向けて、協議をする
    3. 映画上映規定の在り方については、2と並行して、引き続き協議を行い、可及的速やかな合意の形成に務める


    「段階的に」ということで、当初目指していた興行収入の1~2%を徴収するのではなく、スクリーン数に応じての徴収となった。

    スクリーン数の区分表は以下の通り。

    • 10スクリーンまで 15万円
    • 30スクリーンまで 18万円
    • 100スクリーンまで 20万円
    • 300スクリーンまで 22万円
    • 500スクリーンまで 25万円
    • 500スクリーン超え 30万円


    これにより、JASRACによる徴収額は実質的な引き上げとなる。「15〜20%の増加になる見通し」(江見部長)という。

    入場料の値上げなど消費者への影響については、「我々が話せる立場ではない。全興連が入場料を上げないよう努力をしているのは承知している」とした。

    使用料規定などについて全興連と今後も協議を続けるという。