遅いのは致命的。
テレビをスマートテレビに変えてくれるAmazonのデバイス、Fire TV。それにEchoのような音声アシスタント機能を取り付けたのが新プロダクト「Fire TV Cube」です。テレビは家庭の中心に設置されていることも多いですから、それに音声アシスタントが取り付けられるのは便利かも、と思われますが…米GizmodoのAdam Clark Estes記者のレビューによるとどうもそれほど使い勝手は良くないようです。
以下、米GizmodoのAdam Clark Estesのレビューです。
スマートホームの中心となるようなデバイスを発明したいと考えている企業は非常に多いですが、そんな中で一歩先んじてスタートできたのがAmazonでした。アメリカでは何千万人という人がEchoデバイスを所有しており、アレクサが実行可能なスキルの数は何万個にものぼります。音声アシスタントを中心としたスマートホーム・エコシステムが未来の形なのであれば、テレビに音声アシスタントを追加すれば良いのでは、と私は前から述べていたんですが、Amazonが出したFire TV Cubeがまさにそんな機能になっています。ではこれがスマートホーム戦線において一大ニュースとなるようなデバイスかと言うと、そうでもありません。

これは何?:アレクサを搭載したセットトップボックス
価格:120ドル ※日本未発売
好きなところ:声でテレビを操作できる
好きじゃないところ:反応が遅すぎる…
Fire TV Cubeの価格は120ドル、機能としてはFire TVとEchoの合体版といった仕上がりです。もちろん、Cube独自の新機能も搭載しています。従来のFire TVデバイスができる機能はすべてできて、テレビを音声でコントロールできる、というのがメインのポイントでしょう。「アレクサ、テレビつけて」と言うとテレビの電源がつく、といった具合です。「アレクサ、映画『9to5』を再生して」と言うとアレクサが映画を検索して見つけてくれます。無料で見られるかどうかを確認して、もし購入が必要であればどのようにして購入するのかを伝えてくれます。リモコンがなくても声だけで操作できる、というのがデザインの目標となっています。
数日間、Fire TV Cubeを使用してみて言えるのは、確かにリモコンなしで操作できるということです。しかし、リモコンがもう要らなくなったかというとそういう訳ではありません。というのも、音声アシスタントの反応が若干遅いんですね。これはCubeを使用する以前から、Echoの時点で私が不満に感じていたことでした。帰宅して電気をつけるように命令しても若干、時間がかかるのが気になるんです。もちろん、ベッドに入ってしまったあとで、反対側の部屋の電気が点いたままになっているときなどは非常に便利なんですが...。
テレビのコントロールとしては、この若干の時間のラグが非常に気になることがわかりました。命令を理解するのに2、3秒かかり、それからコマンドを実行してくれます。なのでたとえば、見たい映画を探しているときに、スクリーンに一度に8つのタイトルが表示されているとして、次の8つを表示してもらうのに何秒も待たないといけないわけです。不満としては特にひねりも何もありませんが、私にとってはかなり大きな不満でした。

もちろん、アレクサを使うわけなので、既にアレクサに対して抱えている不満もそのまま同じことが言えてしまいます。その代表例が命令をちゃんと理解してくれない、です。デモではAmazonの広報担当がテレビドラマを再生するように命令したところ、再生されたのは『機関車トーマス』でした。帰宅して実際に自宅でアレクサに「映画を30秒巻き戻す」ように命令したところ、アレクサは『30 Minutes or Less』といった30という数字が含まれる映画タイトルのリストを表示してきました。操作を単純化するために、Cubeではリスト上のアイテムに数字が割り当てられています。複雑な映画タイトルを発音しなくても「アレクサ、1番を選んで」と言えるわけです。操作も楽ですし、アレクサが誤解する可能性も低くなるでしょう。しかしこの機能もそれほどスムーズに使える、という感覚は持てませんでした。やっぱり「アレクサ」と何回も言わないといけないのが気になるんですよね。
もちろん命令を誤解するのはアレクサだけの問題ではありません。Google AssistantやSiriも同様にユーザーの命令を間違って理解することが多いです。でも、だからと言ってストレスにならないわけではないのです。今となっては自分の手元にリモコンを置いています。リモコンのほうが操作が確かだし早いんです。私が歳をとっているからボタンやスマホを使いたがっているだけ、と言いたくなる人もいるかもしれませんが、テレビに関しては実用性だけで選んでいると思うんです。部屋に歩いて入って来ると同時にテレビの電源を付けさせて、デイヴィッド・ボウイの映画を再生させる、ということができるのは確かにクールです。けれど、私がテレビを使うときというのは、テレビ画面を見ながら観たい映画を探しているときのほうが遥かに多いわけですね。Fire TV Cubeはそんな状況では役に立ちません。

もしもFire TVを購入予定であれば、50ドル追加してFire TV Cubeを購入することを検討する価値はあるでしょう。Fire TVと同じだけの機能があり、音声コントロールも付いてくるわけです。4KやHDRコンテンツにも同様に対応しています。ソフトウェアのアップデートを通じて、もしかしたら遅い反応は改善されるかもしれません。Amazonがいつも言っているように、アレクサは常に改善を繰り返しています。なのでFire TV Cubeも改善されるのかもしれません。
そもそもEchoデバイスのプライバシー管理って安心なのか、という疑問はまだまだ存在しているわけです。Echoとは呼ばれていないけれど、基本的にはEchoと同じ機能を持つFire TV Cubeをインストールすることで、もしかしたらびっくりするような出来事が起きるかもしれません。しかし人生とはどんな便利さを優先するかの選択の蓄積なのです。
まとめ
・Fire TVが持つすべての機能にプラスしてアレクサの機能もついてくる
・音声コントロールを使うよりも普通のTVリモコンを使ったほうがよっぽど早い
・アレクサは今のところ命令をまだまだ誤解する
・コストは70ドルのFire TVよりは高い
Image: Gizmodo US
Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)