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緊急事態宣言下でアウトレットはどう変わった?──エディター3人の潜入取材【前編】

1月8日からの2度目の緊急事態宣言発出以後、アウトレットから客足が遠のいているといわれる。じっさいに足を運んだGQ JAPAN編集部の3人がレポートする!
緊急事態宣言下でアウトレットはどう変わった?──エディター3人の潜入取材

人の少なさにビックリ!(稲垣編)

「え!? なんでこんなに人がいないの?」

2月8日の月曜日、東名自動車御殿場インター近くの御殿場プレミアム・アウトレットには、人がほとんどいなかった。別の取材のついでに立ち寄ったのである。

到着したのが冬の夕方の16時ごろだったとはいえ、びっくりするくらい人がいない。そういえば、駐車場もガラガラで、「営業時間終了直前なのか?」と、思ったほどだった。宣言期間中は1時間の“時短営業”とはいえ、全店舗、19時まではやっている。残り時間は、3時間もあるのに。

しかし、3時間では、思う存分ショッピングすることはできないから、気になるショップをチラ見する程度のことしかできなかった。それでも、気づいたら服を数点買っていた。なぜなら、普段の“アウトレット・プライス”から、さらに割り引かれている商品がいくつもあったからだ。今年1月1日に「三井アウトレットパーク・木更津」で山ほど買ったばかり、というのに……。

「三井アウトレットパーク・木更津」の初売りで、大量の商品を購入した筆者・イナガキ。このとき買った靴や服で、まだ1度も着用していないものもある……。

Hiromitsu Yasui

期間限定ショップの「カルバン・クライン」では、ルームウェアがなんと定価の80%オフ! おもわず、3点、寝間着用に購入した。「アレキサンダー・マックイーン」のブルゾンも買った。なんと定価の90%オフ!だったのだ。 定価20万円オーバーのものが、2万円とちょっとで買えたのだから、“お買い得”としかいいようがない。

この経験のことを、上司である岩田桂視・デジタル副編集長に話したところ、「“潜入取材リポート”をしたらおもしろいゾ、きっと」というではないか。そこで、岩田副編と、後輩のジュニア・デジタル・エディターの近藤玲央名くんと3人で、2月12日、あらためて御殿場プレミアム・アウトレットを目指した。

驚くほどスムーズに到着(稲垣編・つづき)

この日は金曜日で、都内を出発したのは、12時過ぎだった。

首都高速道路〜東名高速道路の交通の流れはスムーズで、1時間30分ほどで、足柄スマートインターチェンジに到着した。そこから御殿場プレミアム・アウトレットへの一般道はガラガラで、前にも後ろにもクルマはいない。以前だったら、必ず数台連なって向かっていたものなのに……。

とはいえ、駐車場はそれなりに混んでいた。それでも、普段は空きがほとんどないいちばん便利なロケーションにあるP2にも、ところどころ空きがあったから、やっぱり通常よりは人が少ないのはまちがいない。幸運にも2台ぶんのスペースの空きがあったので、そのうちのひとつにホンダ「オデッセイ」を駐車した。

それなりにクルマは停まっていたものの、ところどころ空きがあった。

大型のミニバンであるホンダ「オデッセイ」も難なく停められた。

アウトレット内の人出は前回来たときより多い。詳細は後編で書くが、パンツを購入したヤヌークのスタッフに訊いたところ「いつもより今日は人が多いですね」とのこと。もしかするとテレビの影響かもしれない。

というのも、2日前の2月10日に放送された『Live News イット!』(フジテレビ系列)内の特集で、「アウトレットのセール」がニュースとして取り上げられたのだ。このニュースの取材先は、御殿場ではなく、「三井アウトレットパーク・横浜ベイサイド」だったけれども、これを見て「アウトレットに行こうかなぁ」と、思った人がけっこういたのかもしれない。「今、アウトレットは“お買い得商品”が溢れている」といった内容のリポートだったからだ。

はたして、今回はどんな“お買い得商品”にめぐりあえるか……詳細は後編で!

アウトレットのうまいもの(岩田編)

2月8日午後、稲垣くんがスラック(チャットアプリ)でまくしたててきた。「岩田さん! 先日、御殿場のMaison KEIの前で撮影をしたあとにアウトレットに寄ったら、いまセールの値段がとても安くなっているんですよ。取材に行きましょう!」というのだ。

百聞は一見に如かず。お忙しい読者に代わって、興味深い事柄の取材をするのは、私たちの務めである。新年のアウトレット・リポートを担当した「稲垣+近藤+岩田」の3人組で御殿場プレミアム・アウトレットに向かったのであった。

御殿場プレミアム・アウトレットに到着したぼくたちは、店舗が集中するエリアに近い「P2」駐車場にクルマを停めることができた。この駐車場は創業当初より人気で、週末や大型連休時はまっさきに満車になる。それがきょうは待つこともなく、すんなり停めることができた。初売りのときとはあきらかに違う。当然のことながら、場内を歩く人もまばらだった。プラダグッチナイキなどの人気ショップはさすがに入場制限をしていたが、待機列は短い。ぼくたちは気になったショップを片っ端から回った。

最初に「アレキサンダー マックイーン」に向かい、次に「ボッテガ・ヴェネタ」を見る。店にはいるやいなや、稲垣くんはタグに記載された値引率を見て「岩田さん! 見て! この服、80%オフですよ!」、「近藤くん、これは30%オフだから、そんなに安くないねぇ……」と、数字に一喜一憂しながら試着を繰り返す。そして買う──。いつのまにか彼ひとり、かつて春節で来日した隣人をほうふつとさせる爆買いモードになっていた。いっぽう、ぼくは、稲垣・近藤の2人についていき、店内でひと通り、物をチェックするのを繰り返す。1月の初売りで訪れた「ジルサンダー」や「ロエベ」そして「マルニ」や「プラダ」など、もすべてチェックしたが、こんかいは心躍るものとの出会いはない。初売りですでに散財した後でもあったし、買わずにすませた。

歩き疲れたぼくは「食事をしよう」と2人を誘い、昨年4月にオープンした「瓢六亭」に向かった。ここは渋谷・南平台にあるうなぎ屋の支店で、うなぎは蒸さずにダイレクトに焼く“関西式”のところだ。ひつまぶしのほか、うなぎをしゃぶしゃぶのようにして食べる「うなしゃぶ」など、ユニークなメニューも展開している。

ぼくたちはひつまぶしとうなぎの煮こごり、そして肝串を頼んだ。うなぎが焼きあがる間、ツマミをつついて待つ。カウンターの向こうの焼き場で調理人が腹を開き、串打ちしたうなぎを焼く様子がわかる。ランチタイムをとっくにすぎた夕方なので、客はぼくたちしかいない。次第にうなぎが焼けるいい香りが店内に漂いはじめる──。「アウトレットで買い物をしなくても、うなぎで贅沢できればそれはそれでいい」と、そのとき思った。御殿場プレミアム・アウトレットの新しい楽しみ方を発見したような気になった。

吸い物と漬物、ひつまぶしのみのシンプルな構成。蒸さずに焼くうなぎは皮目がパリッとしていて食感が心地いい。うなぎの風味や脂を感じる控えめなタレ味も好印象だった。(上)4800円(税別)。

「瓢六亭」ではすりおろしたフレッシュな生山椒を提供している。ドライパウダーとは違い、まろやかさを感じた。

うなぎの肝串は1本280円(税別)。リーズナブル!

うなぎの煮こごり。細切りしたしょうがが、よいアクセントになっている。600円(税別)。


木更津より広いぞ!(近藤編)

取材日の数日前、Googleカレンダーに“御殿場取材”という“謎”のスケジュールが追加されていた。すぐにデジタル副編集長の岩田さんに『なんですか? これ』と訊くと、先輩エディター稲垣さんの提案だということが分かった。稲垣さんのように「安くなっているからあれもこれも欲しい!」というタイプではないし、1月1日の木更津アウトレットでの初売り取材で「三井アウトレットパーク 木更津」に行ったばかりだったので、いまいち気が乗らなかった。けれど、在宅勤務が続いていて外出もほとんどしていないし、コロナ禍のアウトレットパークを見ておくのも今しか出来ない取材のひとつだろうと考え、行くことにした。

元日に訪れた「三井アウトレットパーク 木更津」も半日かけてやっとまわりきれるかどうかくらいの広さだが、「御殿場プレミアム・アウトレット」はさらに広かった。2020年に創業20周年を迎え、大規模リニューアルを実施したのだという。「トム ブラウン」や「ジェイ&エム デヴィッドソン」がはいる「ヒルサイド」エリアができ、「HOTEL CLAD」や温泉施設の「木の花の湯」といった新スポットもあった。全290店舗なので、全308店舗の「三井アウトレットパーク 木更津」に店舗数では劣るものの、通路は広々としており3つのエリアに分れているので、端から端まで店を覗いて回ると丸一日かかってもおかしくない。

今年1月1日の「三井アウトレットパーク 木更津」のようす。

Hiromitsu Yasui

ソーシャルディスタンシングを徹底するよう呼びかける張り紙。1月1日の「三井アウトレットパーク 木更津」にて撮影。

Hiromitsu Yasui

1月1日の「三井アウトレットパーク 木更津」と比べると、お客さんはかなり少なかった。行列ができている店舗は「プラダ」や「ナイキ」などのごく一部だけだった。とはいえ、お客さんが少ないのは、私たちにとっては好都合だ。ほとんど稲垣さんの爆買いのようすを遠巻きに見ていただけだけれど、感染対策をしつつの買い回りはしやすかった、と思う。

およそ2年ぶりに訪れた「御殿場プレミアム・アウトレット」で気になったのは、やはり新エリアの「ヒルサイド」にある店舗だ。多様多彩なデザイナーズブランドやセレクトショップの新店が立ち並ぶなか、ファッション担当エディターとして注目したのは、「ロンハーマン」と「タカシマヤ」。「ロンハーマン」のセール率はまちまちだったが、「ロンハーマン別注のラルフ ローレン」「OAMC」「エルダーステイツマン」などの人気ブランドのアイテムが定価より安く買えるのは魅力だ。「高島屋」のアウトレットは、「ホワイトマウンテニアリング」「ファセッタズム」「08サーカス」「レミレリーフ」といった有名ドメスティックブランドが豊富にそろう。一部、50%オフのラックもあったので、好きなブランドのアイテムがあれば“買い”だ。今回、わたしは「ドリス ヴァン ノッテン」のキャップを購入しただけだったが、コロナが落ち着いたら再訪し、稲垣さんのようにド派手に散財するのもいいかもしれない。

「三井アウトレットパーク 木更津」の「バルマン」でスニーカーを物色するエディターの稲垣さん。

Hiromitsu Yasui

後編では、編集部イチの“爆買い”ショッパーである稲垣さんの購入品を中心に、それぞれのショッピングレポートをお届けする。

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文・岩田桂視、稲垣邦康、近藤玲央名(GQ JAPAN)