図書館司書と不死の猫

  • 東京創元社
3.07
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010898

作品紹介・あらすじ

愛妻を亡くし、ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのわたしのもとへ、ある日一通の奇妙なメールが届く。添付されていたフォルダにはなんと、人間の言葉をあやつる猫が語る血も凍るような半生がおさめられていた! わたしはその話にすっかり魅了され、真偽を確かめようと調査にのりだすが……。ミステリ、ホラー、文学への愛とユーモアがたっぷり詰めこまれた不思議でブラックな物語。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に面白くて、終始くすくす笑いながら読んだ。
    ホラーとミステリーの要素もあるが、どちらかと言えばファンタジー色が強くユーモアいっぱい。
    凝った構成の話で、英国式のペダンティックな部分もかなりあり、しかも嫌味はない。それで一層面白味を増している。
    猫好きの方、文学好き(特にホームズファンの方)、ファンタジー好きの方、特にお薦め。
    登場する猫はみんな人間の言葉を喋る。まぁこれは事実かもしれないし.笑
    美しく賢く誇り高い猫・ロジャー(表紙の子ね)に、夢中になったワタクシである。

    主人公はアレック・チャールズワース。ケンブリッジ図書館を退職したばかりで、最愛の妻・メアリーを失った後から話は始まる。
    彼のもとにある日、奇妙なメールと添付ファイルが送信されてくる。
    メールの主はウィンタートン博士。
    開いて見るとそこには、地方劇場の俳優であるウィギーという男と、ひとの言葉を話すロジャーという猫との会話が入っていた。
    全てウィンタートンの脚本だろうと思ったアレックだが、徐々に好奇心にかられていく・・

    章ごとに語り手が変わり、内容もメールのやり取りだったりモノローグだったり。
    笑ったのは、映画化されるなら自分の役はダニエル・クレイグがいいとロジャーが言う場面だ。さすが、1927年ロンドン生まれの猫は違うわ。
    一歳の時に黒猫・キャプテン(たぶん、裏表紙の子)に会い、8つの生を経験している。
    「猫に9生あり」で、かつて全ての猫は8度の死を生き延びていたという。そんな馬鹿にゃ。
    このロジャー、キャプテンとのふたり旅でヨーロッパを巡りながら、本をたくさん読み、様々な言語を学び、論理的な思考を学んだらしい。
    キャプテンはテニスンの「ユリシーズ」を完璧に暗誦出来るのだ(!!)
    ロジャーも、人間の子に捕獲されるという危機にあっても、ミルトンの「闘士サムソン」の一節を頭の中で繰り返していたりする。なんて魅力的なんだ。

    そうそう、中表紙の絵がアレックのテリア犬で、この名前がワトソンという。
    あのチェックの帽子とケープをまとっている。くぅぅ、こんなところまで憎い仕掛けだ。
    お話そのものは、アレックの妻の死因が不明で、ウィギーの姉のジョーも行方不明。
    他にもおぞましいことが起こるのだが、何しろ猫の魅力が勝ちすぎ。
    人間と猫だけでは足りないなぁ。仲を取り持つ「グランド猫マスター」でも登場しないかなぁと思いながら読んでいたら本当に第三部で登場して、もう大喜び。
    ユダヤ・キリスト教の悪魔である「ベルゼブブ」まで出てくる。怖さはないけど。

    不死というものがもたらす不幸感や、現代社会への批判も入り込み、時に愚かしい人間への警告も忘れない。きびきびとした洒落た文章に導かれて読んでいくと、最終章でようやくアレックとロジャーの対面が叶う。この場面が特に好きだ。
    図書館司書は主人公のアレックだが、もうひとり司書がいる。そちらは悪い方ね。
    さてロジャーは自分の不死の運命にどう決着をつけたか。
    ラストに感動が待っている。読むべし。

    もしやこの子は喋れるのでは?そして何もかも分かっているのでは?
    飼い主がいない時、どこかで全く別の猫生を送っているのでは?
    およそ猫飼いさんはみな同じようなことを夢想したことがあるはず。
    そんな私には、ぞくぞくするほど楽しい読書時間だった。ホームズの台詞もたくさん出てくるし、映画や文学作品の引用もいっぱいという、まるでおもちゃ箱のようなお話。

  • ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりの私=アレックは、元同僚の妻メアリーを突然亡くし、傷心を抱えて海辺のコテージで愛犬ワトソンとともに休暇をすごしていた。
    そこで暇つぶしに開いた、ウィンタートン博士なる人物からの奇妙なメール。
    その中身は、ウィギーという男が姉のジョーの失踪と死にまつわる顛末を記した文章と、音声ファイル。その中では、ジョーの飼い猫ロジャーが人の言葉をしゃべり、自らの驚くべき過去について語っていた!


    フォローしているnejidonさんの星5つの評価を見て、手に取った本。作家さんも初読。
    はじめの1/4くらいまでは、まわりくどい文体にのれず、危うくリタイアしそうだった。
    ロジャーの昔語りに入ってからはぐんと面白くなった。

    けれど、本を閉じてみると、残った気分は、素直にただ面白かったというには微妙な感じ。
    イギリス的なブラック・ユーモアにはくすぐられたけれど、古典文学に対する教養が足らない私には、味わいきれなかったのか。
    それより何より、猫好きではない事が重大なハンディだったのかもしれない。

    庭に入り込んできた猫って、逃げるならさっさと逃げればいいのに、なぜにらめっこみたいにじーっとこっちを見て立ち止まるんだろ。

    猫に対する現在の感情は?
    □大嫌い…とはいかないまでも、さらに腰が引けてしまったかも。

    • nejidonさん
      yo-5h1nさん、何度もお邪魔してすみません。
      アイコンの読書グッズの名前を教えていただけますか?
      検索してみたのですが、同じものが見...
      yo-5h1nさん、何度もお邪魔してすみません。
      アイコンの読書グッズの名前を教えていただけますか?
      検索してみたのですが、同じものが見つけられなくて。
      両手がふさがっていても本を読めるなんて!
      私も「そうまでして読みたい」人間なのです・笑
      私のアイコンは元保護猫です。うちは全にゃんがそうです。
      カメラを向けても嫌がらないどころか正座(?)して動かずにいます。

      yo-5h1nさんが登録された西川美和さんと湯本香樹実さんはおすすめですよ。
      どうにかして、私の本棚から「当たり」をひいていただきたいです。(笑)(笑)
      2020/09/23
    • yo-5h1nさん
      おさがしのグッズは、「ブックストッパー」トモエ算盤というメーカーのものです。
      私は当時は東急ハンズで見つけて自分用に4個買い、友人にプレゼ...
      おさがしのグッズは、「ブックストッパー」トモエ算盤というメーカーのものです。
      私は当時は東急ハンズで見つけて自分用に4個買い、友人にプレゼントしまくりました。
      店頭からはいつのまにか消えてしまったのですが、幸い商品はまだ健在のようです。
      ブクログに登録してる人のほとんどは、きっと「そうまでして読みたい」人ですよね〜?

      西川美和さん、湯本香樹実さん、どちらも未読なので、楽しみです!
      2020/09/24
    • nejidonさん
      yo-5h1nさん、ありがとうございます!
      思ったよりフツーの名前でビックリしました・(笑)
      注文する前にお礼をと思って、伺いましたよ(...
      yo-5h1nさん、ありがとうございます!
      思ったよりフツーの名前でビックリしました・(笑)
      注文する前にお礼をと思って、伺いましたよ(*'▽')カラーもいくつかあるんですね。
      たぶん皆さん欲しがるかも、ですね。あ、もうご存じかな。

      西川さんは3冊、湯本さんは6冊、それぞれ私の本棚に入っています。
      少しでも参考になれば嬉しいです!
      2020/09/24
  • 怖いのは苦手ですが、、、気になる。

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    図書館を定年退職したばかりの男に送られてきた奇妙なメール。その添付ファイルには、人間の言葉を話す猫が語る血も凍るような半生がおさめられていた! 不思議でブラックな物語。
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010898

  • 様々な人間と恐ろしい2匹の猫が織りなす、少し不気味な小説です。
    極めて現実的な世界観に対して、超自然的な存在の猫がスパイスとなっています。
    物語は淡々とした進みで、読みやすい一冊。

  • 有名な海外小説を原書で読んでいたり、猫を飼っていたりするともっともっと楽しめるのだろうと思う。(読んでいなくてもある程度は楽しめる)
    独特の書き方で話が進むので、それに慣れるのに前半を費やしたが、後半からどっと話が動き出し、がぜん面白くなった。
    巻末の訳者解説を読むと色々な著作に対するオマージュがどこに隠されていたか分かり面白いので読むことをお勧めする。

  • 不思議な本だった。第一章を読んだ限りでは、読むのがつらかったがだんだんとつづきが気になった。
    吸血鬼のような不死の猫と、それが巻き起こす不幸。
    読後感は不思議と悪くない。悲惨だがどことなくユーモラスな作品。

  • 私のジャンルからは外れるのだけれど、娘が装画を担当させて貰った関係で読んでみることにしました。
    よく言えばハリー・クレッシングの『料理人』と同系列の「奇妙な味」の小説ですね。ミステリーというほど論理的でも無く、ホラーというほど怖くない。ジョイスの『ねじの回転』などの作品がチョコチョコ顔を出す事から、教養小説的な要素もありそうなのですが、こちらに知識が無さ過ぎて良く判りませんでした。
    重層的な構造で、最初はどこに向かうのか判り難かったのですが、途中からは一気に読了。「不死の猫」という伝統的要素とE-mail、デジタルツールを使った現代的なやり取りのギャップがなんか可笑しい。
    猫好き、本好きの人が手を出しそうなタイトルですが、猫に関しては可愛げが無くて邪悪な感じなのでどうですかね。

  • ユニークな中編ホラー(?)小説。
    著者自身も巻末で『ホラーを依頼された』と言っているのだが、本書はホラーというよりは、東京創元社のカテゴリ『奇妙な味』以外には分類出来ない本ではなかろうか。
    『喋る猫』というモチーフは如何にもホラーに登場しそうだし、メールや音声ファイルなど、デジタルなツールが登場するのも今時っぽい。また、作品としては不思議なおかしみがあった。案外、登場人物は死んでたりするんだけどなぁ。不思議。
    猫が登場する作品は、ジャンルをホラーに限っただけでも数多くあるが、異色作と言っていいのでは?

  • 予想の斜め上の展開だった。
    ブラックユーモアみたいな話かと思っていたら、これは、、、ホラーなんだろうか?
    面白かったけど、なんか腑に落ちない感もあるなー。
    殺され方恐ろしくない?

  • 個人的にこの本はホラー小説というよりも奇妙系オカルト風味幻想小説な感じだった。なのでとりあえずジャンルは幻想で……。
    あんまり怖い感じはしないけれど清く正しいオカルトの系列。
    タイトルに図書館司書とあるけれど正しくは「元」図書館司書の話。ロジャーという喋る猫と彼を追うキャプテンという猫に人生を狂わされた人間たちの話。
    メールのやりとりとか台本風とか、色々工夫はあるもののあんまり物語に抑揚がない感じで面白いのか面白くなかったのかさっぱりわからん感じだった。肝心なところもなんとなくぼやけているような感じがした。もうちょいこう、もうちょいなんかしてくれたらこれはホラーだ!ってなりそうなところがさらーっと流されるのでホラーか……?みたいな印象になる。
    オチもなんかこう、ああ……。みたいな感じだった。読みやすくてさらさらいけるけれど、物凄く面白いかと言われると個人的にはうーん。

    タイトルから猫好きが手に取るやつだけれども猫への愛憎渦巻く邪悪な雰囲気がむんむんなのでハートフル猫を求めてはいけないやつ。この作品の猫は賢くて巧妙だけれどもどうしようもなく邪悪です。
    人の顔の上にどかりと乗って窒息を狙ったり首にゴロゴロふみふみして窒息を狙うような猫に、「こいつはわたしを殺そうとしている……!」と思う猫飼いの覚えのある感じを使ったのは上手いと思った。
    あと装丁がかわいくていいですね。目を引く赤と猫はすごくかわいい。

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著者プロフィール

リン・トラス(Lynne Truss)
1955年、キングストン・アポン・テムズ生まれのイギリスの作家、ジャーナリスト。BBCラジオのパーソナリティなども務める。ラジオ劇、小説、子供向け文法ガイドなど多くの作品がある。2003年刊行の『パンクなパンダのパンクチュエーション』は、諧謔味のある文法書としてイギリスとアメリカそれぞれで100万部超のベストセラーなり、日本でも翻訳された。2冊目の翻訳書『図書館司書と不死の猫』が5月11日に刊行される。

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