朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日解体危機か

元役人の眼で問題の本質を解説しよう

元官僚の筆者が記者から受けた質問

国会が盛り上がってきている。裁量労働問題もそうだが、週明けからは再び「森友問題」が注目されるだろう。

というのも昨日放送のNHK「日曜討論」において、森友学園に関する財務省の決裁文書が「書き換えられた疑いがある」と報じられたことを受けて、野党の一部から「事実であれば安倍内閣は総辞職すべき」との意見も出たからだ。

この書き換え問題について報じたのは、3月2日の朝日新聞「森友文書、財務省が書き換えか 『特例』など文言消える」(https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html)だ。

報じられた当初、野党議員からは「財務省自体が吹っ飛ぶような話」(https://www.minshin.or.jp/article/113185)という声が出ていたが、わずか2、3日で「内閣総辞職すべきだ」とまで話が格上げされる重大事案になっている。

本コラムでこれから書く話は、筆者の役人時の経験やそれに基づく推測であり、今の段階で断定的なことは言えないため、多少もどかしいところがあることを理解していただきたい。6日までには財務省が一定の「調査結果」を出すはずであるので、それを読むときの予備知識、とでも考えていただければ幸いだ。

 

まず筆者がこの報道を見たときに直感したのは、「この報道が事実であれば、財務省解体、万が一事実でなければ朝日新聞解体」ということである(今の段階では朝日新聞の報道が事実であるという確信が持てないため、このような「直感」となった。この理由は後ほど詳しく述べよう)。

はじめに、朝日新聞の報道を要約しておこう。ポイントは、2016年6月14日付けの決裁文書について、国会議員に開示されたもの(https://www.minshin.or.jp/download/37616.pdf)と、朝日新聞が「確認」したものが異なっていたということだ。

例えば、朝日新聞が「確認」した文書では「特例的な内容となる」などの文言があったが、国会議員に開示された文書では、その文言がなくなっていた、と報じられている。

ちなみに、新聞各社はこの文書について情報公開請求をしており、それによって公開されたものは国会議員に開示されたものと同一になっている。

要するに、朝日新聞の「確認」したものは、同じ決裁文書であるにもかかわらず、国会議員に開示されたもの(と、情報公開請求で開示されたもの)と違っていたというのだ。これが、「森友文書、財務省が書き換えか」というタイトルの意味で、朝日新聞は関係者の話を引用しながら「森友学園の問題が発覚した後に、文書が書き換えられた疑いがある」と指摘している。

この問題で、元財務官僚の筆者は各方面から取材を受けた。そのほとんどは「朝日新聞の報道が事実である」という前提での質問であった。

質問の内容は次のようなものだった。

①財務省が、今回のような決裁文書の書き換えを行うことはあり得るのか。実は、よく行われていることなのか②今回なぜこうした財務省の行為が報道されたのか(どうしてこのような情報が漏れたのか)③こうした財務省の行為は、問題があるといえるのか。

この場でも、ひとつずつ答えていこう。

第一の質問であるが、これはまずあり得ない。決裁文書は典型的な公文書であり、その改ざんは、刑法犯の虚偽公文書作成等の罪にもなりうるものだ。これは入省時にもたっぷり説明されるし、そのようなリスクを冒してまで「書き換え」をやろうとは思わないのが、普通の役人である。

筆者の役人経験のなかでも、「書き換え」についてはほとんど聞いたことがない。たった1回であるが、筆者の仕事の関係で、別の省庁とやり取りする中で、対外的な連絡文書において、省庁間での合意事項に反することが書かれていたことがあった。調べてみると、筆者がやりとりをしていた省庁の担当者が苦し紛れに書いたものだったことが分かった。

こちらから「書き換え」があったことを相手省庁の幹部に申し入れると、その幹部は「あやうく虚偽公文書作成等の罪になるところだった」と筆者に感謝を示したうえで、すぐに適切に対応した。そのくらい、公務員の間では公文書の改ざんはマズいこと、と認識されているのだ。

しかも、今回の決裁文書の場合、決裁者が8人もいたことが開示された文書から分かる。この過程で改ざんを行うには、組織的な関与が必ず必要であり、誰か一人でも口外したらバレるので、かなり実行は難しいだろうと思う。

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