『雪の階』
奥泉 光
中央公論新社 ¥2,400
昭和10年。伯爵令嬢・惟佐子は、ある日親友の寿子が失踪したことを知る。仙台で投函された葉書が届いた直後、寿子の死体が富士の樹海で見つかる。彼女は身籠っており、傍らには革新派将校・久慈中尉の姿が。これは単なる心中か。男女の事件は、父や兄も関与する政争と複雑に絡みあっていた。そしてついに二・二六その日を迎える。〈人はおのずとなることのために死ぬのです〉。激動の時代を舞台にした華族小説が誕生。
『ねほりんぱほりん ニンゲンだもの』
NHK 「ねほりんぱほりん」制作班
マガジンハウス ¥1,600
モグラに扮した山里亮太(ねほりん)とYOU(ぱほりん)が、訳ありゲストから本音を聞き出す人形劇トーク番組が書籍に。元国会議員秘書が重要業務と語る〈葬式チャンス〉、元薬物中毒者の鉄板ギャグとは…。他、2次元しか愛せない女、痴漢えん罪経験者、ナンパ教室に通う男、没落社長など。硬軟取り混ぜた顔ぶれの告白が、世相の闇と人間の業をあぶり出す。ハードなネタにはユルい空気を。相づちにはさりげなく、深淵な問いかけを。聴く力にも注目の1冊。
『珈琲が呼ぶ』
片岡義男
光文社 ¥1,800
「コーヒーでいいよ」の“で”は英語に翻訳することができるか。喫茶店について語るとき、椅子が大事である理由。理想的なマグカップの形。フィリップ・マーロウはコーヒーを飲むか。ボブ・ディラン、ジム・ジャームッシュ、黒澤明、つげ義春、三軒茶屋、京都・姉小路通…。片岡義男のまなざしに触れて、物語が香り立つ。〈コーヒー豆は物語だよ。さまざまな可能性、というかたちでは、物語の原点だ〉。全45編の書き下ろしエッセイが誕生。