YouTuberが中高生の「なりたい職業」の第3位(ソニー生命調べ、4月発表)になったように、インフルエンサーに憧れる人は世代を問わず多い。インスタグラマーもそうした憧れの存在になりつつある。
インスタグラマーになるため、インスタグラムのフォロワーを増やしたい。そう思った時、横行する「フォロワーを買う」サービスを利用するのは、どんな人でも気がひけるはずだ。
もっと自然にフォロワーを増やすには? そんなニーズに答えるツールとして、「自動集客ツール」というものもある。ユーザーと相性の良いアカウントを自動でフォローし、フォロー返しを狙うサービスだ。 フォロワーを買うほど露骨ではない、集客ツールのビジネスの実態を、業者の男性がBusiness Insiderの取材に明かした。
Instagramのフォロワーを自然に増やす方法とは?
REUTERS/Thomas White
自動集客ツールの仕組みは実にクレバーだ。「ハッシュタグ(#)」やフォローしているアカウントなどから相性の良いアカウントを自動でフォローし、フォローされる「フォローバック」を仕掛ける。ツールを使っても、自動フォローした相手からフォローされるかどうかは、投稿の腕前次第になる。 フォロワーを買うわけではなく、ユーザーの努力も試され、法人の利用も多いという。
連日100件を自動フォロー
取材に応じた業者の男性は、自身のインスタアカウントを使って、サービスの概要を説明してくれた。
男性は、自社のサービスを試すため、専用のアカウントを立ち上げた。連日、親和性の高いアカウントを100件ずつフォローした。グルメの写真を掲載し、当初の0フォロワーから1万以上のフォロワー数まで成長した。
男性は、フォロワー数の増減を示すグラフを示しながら、 一緒に食事に行くような「リアルなつながりもできた」と手応えを話した。
ちなみに、もし、自動でフォローをした先から24時間経っても、反応がなければ、フォローを取りやめる。「ユーザーのフォロワー数とフォロー数のバランスが大事だから」と男性は言う。
真面目なユーザーをコンサル
ツールのユーザーは、フォロワーを増やしたいと、とても熱心という。
撮影:今村拓馬
ツールを使うユーザーは、法人や主婦、インスタグラマーの卵とさまざま。広告を受けたい人や単純にフォロワーの獲得を楽しみたい人たち。企業のアカウント運用を代行する業者から、ツールを使用したいと、お願いされることもある。
ユーザーからは毎日100件程度、サービスの使い方や「フォロワーを伸ばすには」といった相談が寄せられる。 男性は「みなさん低姿勢。使わせてもらって、と。本当に真面目」と話す。
ツールを利用しても投稿次第では、フォロワーが増えないケースもあり、「もう返金しますから、と言っても、『いいです、使いたいんです』とユーザーはやめない。本当にモチベーション、熱意を感じる。ツールを利用する継続率が半端ない」という。
なぜ、そこまでユーザーが離れないか?
男性の企業では、投稿の時間や写真、ハッシュタグの使い方もアドバイスしている。「ツール自体というより、個々(のインスタグラマー)をサポートする、コンサルみたいなものなんです。誰もインスタの運用の仕方を教えてくれない。本当にちゃんとしているんです」と男性は強調した。あくまで指南であり、いわゆるグロースハックだ、ということか。
ツール流行の背景に「脱ホットペッパー」
ツールは、法人の中でも、特に、インタグラムからの集客に力を入れる美容業界から重宝されている。
男性は、美容業界にツールが流行する背景に「脱リクルートがある」と指摘する。
インスタグラムの集客が流行るのは、「リクルート離れがある」と男性は指摘する。
撮影:今村拓馬
「美容院や飲食店はホットペッパーから集客していたが、掲載料が高い。そういうプラットフォームよりも、個々がSNSから集客するようになった。脱リクルートがある」(男性)
利用者側も、インスタを検索エンジンとして利用するケースが増え、特に美容業界ではハッシュタグで検索をしてトップ画面に出る「人気投稿」に表示されるかどうかが、集客に影響する。
例えば、インスタの一般ユーザーが「美容院」「渋谷」などで検索し、トップ画面に表示される人気投稿から行き先を選ぶパターンだ。
男性は「10、20代は、インスタが検索のプラットフォームになりつつある」と話し、「人気投稿はかなり信用力があるので、(ツールのユーザーが)人気投稿の1位に結構、バンバン入っている」と実績を紹介した。
「OKだとは思っていない」
インスタグラムの規約には、「自動システムなどを使って本サービスのあらゆるコンテンツ(利用者のプロフィールや写真を含みますが、これに限定されません)を巡回、収集、キャッシングしたり、アクセスしたりすることを禁止しています」と定めている。
フォロワーを増やすサービスは、人々の潜在的なニーズに支えられている。
撮影:今村拓馬
男性も「(サービスがグレーかどうかは)OKでしょう、というスタンスは、まずない。どちらかというと裏技のツール。インスタの公式ツールでもない」と話す。
しかし、男性が示した自動集客ツールの利用者数やツールを利用した人の平均的なフォロワーの増加数には、かなり好調な数字が並ぶ。しかも、男性によると、同様のサービスを提供する会社は「10数社ほど」ある。インスタグラマーマーケティングをする別の業者も、「 ユーザーからフォローされるかどうか、投稿の魅力次第。買うよりは悪質じゃないと思う」と理解を示す。
男性は、「サービス(の是非)は、ユーザーが利用するかどうか。需要はある。ツールを置いておけば、勝手に使われていく。(サービスの必要性は)ユーザーが一番わかっているはず。サービスは、ユーザーの心の闇が生んだようなもの」と淡々と分析をした。
ツールを使って、フォロワーが増えれば、プラットフォームの賑わいにもなる。このような“非公式”ツールは、インスタグラム社、インスタのユーザー、どちらにもメリットがあるのかもしれない。
(文:木許はるみ)