長島聡の「和ノベーションで行こう!」

「ものづくりの民主化」はロックだ! 第6回 稲田雅彦・カブク代表取締役CEOに聞く

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日本型のイノベーション=「和ノベーション」を実現していくには何が必要か。ドイツ系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーの長島聡社長が、圧倒的な熱量を持って未来に挑む担い手たちを紹介していくシリーズ。第6回は稲田雅彦・カブク代表取締役CEOです。

技能工の「経験・勘・度胸」をデータ蓄積

長島稲田さんと知り合ったのは約1年前で、その時は失礼ながら「3Dプリンターのスタートアップ」といった印象でした。今年2月にあらためてお会いして、「ものづくりの民主化」というコンセプトと、より製造業領域での事業を実践されていることに大変感銘を受け、つい最近、業務提携をさせていただきました。まずは、どんな事業を展開しているのか紹介していただけますか。

稲田 一言でいうと、ネットで注文を受けて受託製造するオンデマンド製造サービスです。顧客が「こんなモノを作りたい」という設計データや個数、納期などを入力すると、どんな工法がいいか、どんな材料を使うか、どこの工場に発注するか、といったことを即時~短時間でお見積をし、実際に製造から納入まで請け負います。と言っても、当社はファブレスで工場や装置を持たず、世界30カ国、約300工場の中から最適な工場を選んで発注しています。「KABUKU CONNECT」と名付けたサービスサイトでは「国内最大級の技術購買のアウトソーシング」とうたっています。

長島 簡単に試作ができる3Dプリンターだけでなく、切削、射出成型や板金、鋳造など、ほぼすべての工法に対応できるそうですね。どの加工法が最適か、どのように目利きをしているのですか。

稲田 いきなりすべての工法に対応するのは大変なので、当初はデジタル技術と親和性が高い3Dプリンターからスタートしました。3Dプリンターでも、素材は樹脂から金属、大きさ、仕上げはどうか、など条件はいろいろありますが、ほぼシステム化が可能です。しかし、従来からの工法にも対応するには、より複雑な方程式を解かなければならないので、実際に成型や金型加工のメーカーで働いた経験者を採用し、人手も入れて対応しています。

重要なのは、多様な工法に対応し、様々なデータを蓄積していくことです。設計データから製造、検品、検収して納入する一連のプロセスのデータをシングルソースデータで蓄積する。今まで、熟練した技能工が積み上げてきた「経験」と「勘」と「度胸」、略して「KKD」と呼んでいますが、それをシステムに蓄積し、学習させるわけです。システム化によって生産効率を上げ、人間は人間にしかできないことをやる。同時に、今までものづくりをやったことのない人でも簡単にものがつくれるよう、ハードルを下げていきたいと考えています。

長島 「技術購買」という言葉はものづくりの専門用語で、ベンチャー企業ではあまり使いませんよね。そこに、稲田さんのこだわりを感じます。

稲田 当社はファブレスですので、単純に製品を仕入れて顧客に売るのではなく、工程管理まできちんとやる。半分は商社、半分はメーカーという感じです。どこに任せて、どこまでは自分たちで作るか、実はこういう目利きは「中小工場のおっちゃん(社長さん)」はみんなやっていることですよね(笑)。

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