相模ゴム,コンドーム
(写真=Olga Kuzyk/Shutterstock.com ※画像はイメージです)

薄型のコンドームなどの避妊具を展開する相模ゴム工業 <5194> の業績と株価が堅調だ。相模ゴムはオカモト、フジラテックスに次ぐ業界3位の大手コンドームメーカーだが、中国などの海外需要にけん引され、2015年には株価の高値が年初比で約2.86倍になるなどインバウンド銘柄の代表格として投資家からの買いを集めたようだ。

直近、株価は売られていたものの、今年2017年に入り、業績の回復基調が伝わると2015年高値を更新、さらに上値を伸ばす様相を呈している。本記事では相模ゴムの強さの秘密を探ってみたい。

いまさらだけど相模ゴムとは? 事業概要を解説

コンドームメーカー相模ゴムが売りにする強みはなんといってもその「薄さと丈夫さ」である。薄さが0.1ミリを切る0.09ミリのコンドームを中心に0.02ミリのゴムじゃないコンドームを展開するなど「物質感を払しょくした製品」が人気だ。

最近でこそ、若者の間での需要が減退気味にあるといわれる避妊具だが、海外からの需要が大きく日本のコンドームメーカーの売り上げは堅調なのだといわれている。インバウンド関連銘柄として、ドラッグストアとともにヘルスケア製品の一環として買われているようだ。また、最近では東南アジアや東アジアへの輸出も堅調な模様で薄型製品の出荷が伸びている。

また相模ゴムというとコンドームや潤滑剤などの性関連商品のイメージが強いが、食品などの包装用のフィルムや介護用の入浴製品なども扱っている。

ちなみに相模ゴムホームページによると、コンドームの世界各国の呼び名が紹介されている。アイルランドでは「johnny(ジョニー)」、香港では「防弾チョッキ」などクスッとなるような名称が多く、豆知識として知っておくと面白いかもしれない。

相模ゴムの業績推移とセクター別の概況

同社が2月13日には発表した第3四半期決算短信によれば、四半期ベースでの利益は、前年の第3四半期決算の純利益が前年度で18.4%減だったものが、今年は138.3%増加となっている。

また同時に29年度の通期予想を上方修正している。通期予想は、純利益が従来の6億5000万円から8億5000万円の大幅に上振れた模様だ。セクター(部門)別に売上高を見ると、ヘルスケア部門が売上高31.7%増加、営業利益が105.7%の増加と好調。アジア圏からの相模オリジナル0.02の受注が堅調な模様。

またプラスチック製品事業も新規顧客獲得が功を奏し、営業利益は43.7%増加している一方で、入浴介護サービスが営業損失となり、足を引っ張る形となっている。本業セクターの業績が好調なことから2018年以降も業績の上振れは大きく期待できそうだ。

今後は株主還元が求められる?

相模ゴムの株価は2017年に入り、数年来の高値を更新している。通常であれば業績上方修正を伴った堅調な株価の上値追いというのは「買い」の判断ができる場面でもある。

ただ今後株価がこのまま伸びていくかどうかは、18年以降の業績の如何によるところがおおきい。業績を上方修正させているとはいえ、すでにPER(株価の買われすぎ判断の指標)も15倍と同業他社と比べて特別に割安な水準とは言えない。

そのため今後、株価を伸ばしていくには企業が何かしらの株主還元策を講じることが求められるように思われる。現在、相模ゴムの配当利回りは0.81%と決して高くはない水準である。業績が伸びているわりに、配当がここ数年1株当たり10円で止まってしまっていることも多少問題とみなされてしまうこともあるだろう。

配当性向を明確に数値化して1株利益に沿った配当を打ち出すことができれば、テーマ株としてのみならず長期的な株主を集めることができるはずだ。

またコンドームメーカーは、不況時でも好況時でも比較的安定して売れる製品のため、ディフェンシブ関連としての側面が強いのも一つの魅力である。

投資先としての候補としては魅力があるが……

今のところ業績は好調で株価も堅調に推移しているといえる相模ゴム。一連の話をまとめると次のようになる。

1. アジアを中心に薄型のゴム製品やプラスチック包装製品が伸びている(インバウンド需要の復活)
2. 直近、業績を上方修正させて高値をとってきたことで注目株となっている
3. 株主還元策が今後は求められる

インバウンド需要は、減退したり、再び復活したりと先が読めない面がある。また。高値をとってきたことや業績を上振れさせたことで、上昇トレンドにつくトレンドフォロワーの買いが続くことが想定される。

業績が伴わなくとも株価がどんどん上がっていくと、そのうちババ抜きのような状態になることもあるので注意が必要だ。短期的な値幅取り銘柄から長期的な上昇トレンド銘柄へと移行するため、今後はやはり株主還元策の高まりが期待されるところだといえるだろう。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学を卒業後、証券会社において証券ディーリング業務を経験。ヤフーファイナンスの「投資の達人」においてコラムニストとしても活動。2015年には年間で「ベストパフォーマー賞」「勝率賞」において同時受賞。個人ブログ「 インカムライフ.com 」を運営。著書に『 元証券ディーラーたにやんの超・優待投資 草食編 Kindle版 』(インカムライフ出版)がある。