「国産なくなる」伝統と大麻めぐる論争 神事用、三重県が栽培不許可で波紋

大麻は玉串の榊の葉と紙垂(しで)を結ぶ緒として使われている
大麻は玉串の榊の葉と紙垂(しで)を結ぶ緒として使われている

 神社関係者らが申請した玉串や注連縄(しめなわ)などに使われる神事用大麻の栽培について、三重県が許可しなかったことが波紋を広げている。

 大麻トラブルが相次ぐ中、県は代替品の存在や盗難の危険性を不許可の理由に挙げる。ただ神事用大麻は国産品が激減、いまや9割が中国産という現状にある。神社関係者は伊勢神宮(同県伊勢市)がある地で「伝統を継承し、神具を国産品でまかないたい」との思いが強く、再申請も検討。伝統と大麻をめぐる論争はなお続きそうだ。

 大麻草の栽培許可を求めたのは、三重県の神社関係者らでつくる「伊勢麻振興協会」。協会によると、日本では古来、麻繊維の産業が盛んで麻薬成分の少ない在来種が広く流通していた。神事用大麻も戦前は国産品だけでまかなわれてきた。

 しかし戦後の大麻取締法によって大麻栽培は都道府県知事の免許が必要になった。神事を含む産業用でも厳しい審査基準が設けられたため大半の栽培が禁止され、許可を受けて栽培する生産農家が減少。近年は栃木県の十数軒などを残すのみとなり、中国産や化学繊維で代替している。

 このため、「いずれは国産の大麻がなくなってしまう」として、伊勢神宮のある三重での栽培を目指して平成27年3月に協会が発足。伊勢市内に約50アールの用地を確保し全国に供給する計画を立て、昨年11月に許可を申請した。

 だが、県は今月6日に不許可を通知した。「中国産大麻や化学繊維の代替品が流通する中、あえて三重で大麻栽培を行う合理的な必要は認められない」。県は不許可理由をこう説明した。防犯カメラの設置予定がないなど厳格な栽培管理態勢や反社会的勢力の排除が困難な可能性も指摘した。

 大麻をめぐる社会情勢も影響したとみられる。昨年11月、医療用大麻の必要性を訴えていた元女優の高樹沙耶被告が沖縄・石垣島の自宅で大麻を隠し持っていたとして大麻取締法違反罪で起訴された。鳥取県でも、「町おこし」の一環として県の許可を受け、麻薬成分が極めて少ない産業用大麻を栽培していた大麻加工販売会社社長の男が、栽培していたのとは別に入手したとされる違法な大麻を所持したなどとして、12月に有罪判決を受けた。

 栽培許可を得た業者が立件される異例の事件を受け、鳥取県では再発防止策として産業用を含む大麻栽培を一切認めないようにする類を見ない条例改正が行われた。厚生労働省も監視強化を全国の自治体に通知するなどしており、三重県は「大麻による検挙者が増加している社会情勢もかんがみた」とした。

 協会は栽培不許可に不満を募らせる。産業用大麻は麻薬成分の少ない品種であるなどとし、協会理事の新田均・皇学館大教授は「大麻による犯罪と栽培は別物。伊勢神宮のある伊勢の地で伝統の大麻栽培をすることに意義がある」と主張する。協会は、神社本庁(東京)などの協力を得て全国的な運動にする構えだ。

 ただ、三重県も交渉の余地を残している。協会は全国流通を目指すが、県は「戦前にみられたように地元産の大麻を地元の神社仏閣で使う地産地消なら理解できる。監視カメラなど盗難防止策を講じれば許可への再検討はする」という。

 これに対し、再申請を検討している協会は「地産地消では農家の生計が立てづらい。何とか(全国流通を)理解してもらえないだろうか」(新田教授)と訴えている。

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