かつてそこは「事故現場」だった:写真ギャラリー

写真に写っているのは一見ありふれた街の風景だ。しかし、ここではかつて、事故が起きていた。中国在住のフォトグラファーが世界の都市をまわり収めた風景写真は、過剰なニュース摂取が当たり前になった情報社会にギモンを提示する。
かつてそこは「事故現場」だった:写真ギャラリー

スティーヴン・チャウは、“ニュース”が大好きだ。新しい大統領選に関する論争のようなものでもなければ、コーチェラでカイリー・ジェンナーがどんな服を着ていたかというようなものでもない。ネットのフィード上には現れないニュースに対して、彼は非常に高い関心を示している。

彼がいま制作している作品「Big Cities Small Things」では、火事やおかしな事故、ちょっとした犯罪を伝える「ローカルニュース」が報じられた平凡な場所に視線が注がれる。「多くの人が関心を寄せるのは、大都市で発生する大きなニュースです」とチャウは話す。「この作品は違うアプローチをとっていて、どんな小さなものであれ、大都市においてニュースがいかに人々に影響を与えるかを探るのです」

チャウは、確かにそうしたニュースのことをよく知っている。彼自身、10年以上前にシンガポールでタブロイド紙のフォトグラファーとしてキャリアをスタートさせているからだ。その仕事を通じて、彼は面白かろうが退屈だろうが、すべての出来事から最上のストーリーを引き出すことを学んだ。「本当に勉強になりましたね。なぜって、最高にありふれたニュースでさえも面白く見せなければいけないのですから」と彼は語る。

メディアの飽くなき年中無休の好奇心はチャウに刺激を与える。昨年、彼はアシスタントとともに地方紙を読み漁り、目立つことのない(しかし興味を引く)ストーリーをひたすら探した。彼が住む北京に始まり、世界の7都市の新聞をチェックした。そして24mmと45mmのティルトシフトレンズを装着したニコン「D800E」でそのシーンを撮影した。写真は美しく、柔らかで、もやがかかったような色をしている。作品につけられた説明文を読んで初めて、それらのロケーションの意味が明らかになる。

チャウは、人々が読みたいニュースの種類は場所ごとにさまざまなことを発見した。ロサンゼルスやニューヨークのような米国の都市では、ストーリーは暴力的でおぞましいものになる傾向がある。パリやロンドンでは、些細な犯罪や交通事故、抗議行動が好まれる。日本では、東京の地下鉄で女性の遺体が入ったスーツケースが発見されたというような異様なストーリーが好まれる。

「ぼくは、自分たちがことさら科学的な分析を行ったと主張するつもりはありません」と、彼は話す。「しかし、ぼくたちが読んできた小さなニュースに限って言えば、ニュースに対する文化的期待とでもいうべきものは、都市ごとに異なっていると分かったのです」

このフォトグラファーは、メディアがニュースの洪水を起こし続けていることに対して複雑な思いを抱いている。ニュースの絶え間ない摂取は人々の健康に害を及ぼし、本当に大切な情報を感じにくくさせると示唆する研究もある。

「ニュースをあまり読まないようにすることが解決法なのだと言うつもりはありません」と、チャウは話す。「でも、事件発生から2分後にスマートフォンに送られてくるようなニュースが、必ずしもいいものだとは限らないでしょう」


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TEXT BY LAURA MALLONEE