ベンチャー系(VC)FinTechスタートアップへの投資が5期連続で落ちこんでいることが、第2四半期の報告から判明した。

アント・ファイナンシャル(中国)への大型投資が後押しとなり、VCスタートアップへの投資額は25億ドル(約2608億円)まで引きあげられているが、欧米、アジアのスタートアップの勢いに失速が目立つ。その反面、FinTechに参入する企業の動きは5期連続で活発化しており、32%(前年同期比9ポイント増)に達している。

カリフォルニアへの投資額が2倍に増え、ニューヨークが2番手に

KPMGとCBインサイトが四半期ごとに発表しているレポートによると、第2四半期の全世界のFinTech投資件数は374件、投資総額は94億ドル(約9806億800万円)。前四半期から37億ドル(約3859億8400万円)伸びているものの、スタートアップに流れる資金は縮小傾向にある。

北米のVC系FinTechスタートアップの後退が最も著しく、前四半期には130件あった取引が97件まで減少。しかし初期段階の中型FinTech投資は53%の増加で460万ドル(約4億7987万円)を記録したほか、カリフォルニアへの投資が倍増しニューヨークを追いぬくなど、新たな動きも出始めている。シリコンバレー、ニューヨーク、カリフォルニアと、北米リーダーのバトン競争だ。

アジア地域へのVCスタートアップ投資は26億ドル(約2712億3200万円)減の7億7200万ドル(約805億3504万円)。この減少は大型投資件数が少なかった影響によるもので、実際は3地域中最も加速している。企業の参入率は前年同期比2ポイント減の39%だが、前四半期からは8ポイント増。そのため北米への見解とは異なり、今後も順調な成長を続けていくとの見方が強い。

回復傾向にあるのは欧州で、43件の取引と総額3億6900万ドル円(約384億9039万円)の資金が、欧州VC系スタートアップに流れこんでいる。独FinTechの勢いは前四半期から継続。モバイル銀行のN26や消費者金融プラットフォームを提供しているFinanzcheckなどのスタートアップを中心に、投資額がUKを80%上回った。

注目分野としてはブロックチェーンのほか、ゆっくりとしたペースで保険・医療テクノロジー分野が盛り上がりつつある。世界最大の生命保険・金融サービス会社、AIAグループがウェアラブル技術を健康管理に取りいれるなど、従来の保険産業をデジタル化する手段を探索する動きが目立つ。今後のFinTech市場の変動が楽しみだ。( FinTech online編集部

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