『ロミオ+ジュリエット』(96)若く初々しい2人が、出会った翌日に結婚!
何度も映画化されてきたシェイクスピアの悲恋物語をちょうど20年前に演じたのはレオナルド・ディカプリオとクレア・デインズ。バズ・ラーマン監督の『ロミオ+ジュリエット』(96)はセリフはオリジナルのまま、時代設定を現代に、名家同士の対立をマフィアの抗争劇に置き換えた作品。
争いが激化する中で恋に落ちたロミオとジュリエットは、出会った翌日の午後に教会で挙式する。ロミオの従者、ジュリエットのばあやと運転手の3人が見守られてバージンロードを歩くジュリエットはノースリーブのミディ丈のドレス。ロミオはブルーのスーツに花柄のネクタイ。その後に待ち受ける悲劇を知らない2人の幸せな表情が切ない。熱帯魚が泳ぐ水槽越しの出会いやエレベーター内でのキスなど、恋の高揚を描いた名シーンもたくさん。
今や貫禄のレオも、TVシリーズ『ホームランド』で強いヒロインを演じるクレアも、この頃はこんなに初々しかった!
『暗くなるまでこの恋を』(69)男を翻弄する、カトリーヌ・ドヌーヴの神がかり的美しさに注目。
フランソワ・トリュフォー監督が1969年に発表した恋愛サスペンスで、カトリーヌ・ドヌーヴが演じたヒロイン、ジュリーはインド洋の仏領レユニオン島のタバコ工場経営者のルイと結婚する。ジュリーが島に来るまで2人は会ったことはなく、文通と写真の交換だけで結婚を決めた。
本作でドヌーヴが着ている衣裳はすべてイヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)のデザイン。ウェディングドレスは、サンローラン(SAINT LAURENT)がディオール(DIOR)時代に発表して出世作になったトラペーズ・ライン。シンプルなデザインで花嫁の美しさが引き立つ。ジャン・ポール・ベルモンドが演じる新郎も白のタキシード。カトリック教会での伝統的な結婚式は厳粛なムードに包まれて執り行われる。参列者も抑えた色調の中で新郎新婦はまばゆいばかりの存在感だ。
実はジュリー、港へ迎えに来たルイに事前に送った写真は別人のものだと告白したのだが、相手が絶世の美女ゆえに彼はジュリーの言葉を鵜呑みにして、大喜びで結婚してしまう。だが、その裏には秘密があった。ドヌーヴの神がかった美しさは、男を翻弄し破滅させるファム・ファタールそのもの。サンローランのワードローブの数々が、その美貌をさらに華やかに際立たせている。
『パリの恋人』(57)ウェディングドレスを着て歌って踊るオードリー。
ニューヨークの書店で働く文系女子がファッション誌のキャンペーンモデルに大抜擢されてパリに、というシンデレラストーリー。パリの街中で撮影をしていくうち、彼女を発見したカメラマンに恋してしまうという物語で、オードリー・ヘプバーン演じるヒロイン、ジョーはユベール・ド・ジバンシィがデザインしたドレスの数々を着こなす。
その中にはもちろんウェディングドレスも。というわけで、ドレスの披露は本当の結婚式ではなく、雑誌のフォトシュートやファッションショーという場になるが、フレッド・アステア演じる年上のカメラマン、ディックへの想いがあふれるオードリーの表情はどのシーンでもとてもキュート。サテンとチュールでミディ丈のウェディングドレスはミュージカルシーンで踊るための仕様だが、きれいな脚のラインが見えて素敵。教会でドレス姿のジョーとディックが再会してからのラストシーンは、2人きりのウェディングと言えそう。
『ある公爵夫人の生涯』(08)ダイアナ妃を彷彿させる? イギリス貴族の悲しきウェディング。
18世紀後半、17歳でイギリスのデヴォンシャー公爵と結婚した貴族の娘、ジョージアナ・スペンサーの物語。名字で察しがつく通り、ジョージアナはあのダイアナ元イギリス皇太子妃の先祖。キーラ・ナイトレイが演じるジョージアナは冒頭で、デヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)と挙式する。
同作の美術監督、マイケル・カーリンは「豪華でありながら内輪的な雰囲気を出したかった」として、ロケ地のチャッツワースの教会をキャンドルで埋め尽くし、ムードを作り上げた。クリーム色のドレスはヴェールもなく、いわゆるウェディングドレスとは違うけれど、デコラティブかつゴージャスなデザイン。結婚後も舞踏会などで華やかな衣裳や60センチ近い高さに盛ったヘアスタイルなど、過剰なロココ調のスタイルを披露している。
年の離れた夫との結婚し、美貌と明るい性格で社交界の人気者になるも、夫には彼女への愛情はなく、世継ぎを産むことだけを求められたジョージアナ。夫には愛人が何人もいるが、彼女自身も別の相手と恋をする。ダイアナ妃は彼女の人生をなぞったの? と思うほど、そっくりな生涯を送った。
『セックス・アンド・ザ・シティ・ザ・ムービー』(08)デザイナーズ・ブランドのドレスを着こなすモードな花嫁といえばキャリー!
映画を見た人ならご存知の通り、結婚式そのものよりも準備過程の描写が見どころの『セックス・アンド・ザ・シティ』(08)。人気コラムニストであるヒロイン、キャリーとビッグの結婚は『VOGUE』で特集を組まれるという設定で、カメラマンのパトリック・ドゥマルシュリエや同誌の名物エディターだったアンドレ・レオン・タリーも出演。
ヴェラ・ウォン(VERA WANG)、クリスチャン・ラクロワ(CHRISTIAN LACROIX)、ランヴァン、ディオール(DIOR)、オスカー・デ・ラ・レンタ(OSCAR DE LA RENTA)など様々なデザイナーのドレスを試着。その内の1着、ヴィヴィアン・ウェストウッドのドレスを晴れの日のために選ぶ。撮影時、キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカーは42歳。ビッグシルエットのドレスからミニ丈まで着こなせたのはファッショニスタとしても名高い彼女だからこそ。
ニューヨーク市立図書館での結婚式はキャンセルしたものの紆余曲折を経て、最後にめでたく結ばれる2人。これが3度目の結婚になる新郎の希望に沿い、ニューヨーク市役所で地味婚。キャリーはヴィンテージショップで見つけた白のスーツに足元はブルーのマノロ・ブラニク。セレモニーよりも、共に生きる誓いそのものを重視する大人の結婚式となった。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(13)カラードレスのお手本的着こなしはこの映画でチェック。
ロンドンを舞台に、タイムトラベル能力のあるティムと出版社に勤めるアメリカ人のメアリーが主人公の恋愛映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』。のウェディングは、彼の故郷であるイギリス南西部のコーンウォール。
レイチェル・マクアダムス扮するヒロインはケイト・モスが大好きで、ファッションもヴィンテージを好むタイプ。そんな彼女が選んだのは深紅のドレス。結婚式当日はあいにくの天候だが、灰色の空とドレスのヴィヴィッドな赤のコントラストが新鮮。しまいには嵐になり、挙式後のガーデンパーティは土砂降りと強風で散々な様相になってしまうが、新郎新婦も家族も招待客も悪天候を笑い飛ばしながら楽しい時間を過ごす。
ティムはそれまで、自分や周囲の人々のささやかな幸せのために時を遡って少しだけ過去を修正していたけれど、この晴れの日に関しては、たとえ嵐でもそのまま、あるがまま(と言っても、不都合なお祝いスピーチは度々時間を巻き戻して修正!)に過ごす。まさにかけがえのない「愛おしい時間」についての物語が描く結婚式はハッピーな空気に満ちあふれた、理想のウェディングだ。
Text: Yuki Tominaga