西三河の各地域には多数の名木がある。その中でも国や県、市から天然記念物に指定されている名木中の名木といわれる巨木が点在する。今回の歴史散歩は、古の時から地域の人々を見守ってきた名木を訪ねて、刈谷市・安城市・豊田市・岡崎市・西尾市、5市をドライブで巡った。



刈谷市指定天然記念物 乗蓮寺・シイ

刈谷市今川町2


閑静な住宅街となっている旧街道沿いに乗蓮寺はあった。真宗大谷派の寺院で、江戸時代前期の草創とされる。山門をくぐると本堂の左に立派なシイがある。樹齢は850年と推定され、昭和33年には刈谷市指定天然記念物に指定された。幹の根元に大きな空洞があって、昔タヌキが棲んでいたと言い伝えられている。昭和34年の伊勢湾台風で、大部分に損害を受けたが、現在は樹勢を回復し、今では実もつき始めている。


愛知県指定天然記念物 永安寺の雲竜の松


安城市浜屋町北屋敷


永安寺は、曹洞宗の寺院。簡素な山門をくぐった先に背の低い大松がある。一般的に松の主幹は地面から垂直に伸びるのだが、この松は、1.5mのところから北西・南・東の3方向に分かれて横に伸びている。この樹形が、雲を得てまさに天に昇ろうとする竜を連想させることから「雲竜の松」と呼ばれている。幹周4.4m、樹高4.8m、枝張りは東西17.9m・南北24.7m、樹齢は推定350年。

愛知県指定天然記念物 寺野の大クス

岡崎市夏山町寺野 寺野薬師堂


このクスは、6mほどの断崖上にあり、根部は断崖の下に広がり、南側が露出している。現れている根の部分の横幅は10m程ある。断崖上を基部とすれば、幹周りは12m程、樹高は36m程となる。明治27年、暴風雨により一の枝が折れ、その枝周りは2.5m程の大きな枝で、当時の価格で75円の値がついたといい、また明治末に折れた枝は時価100円であったという。これらのお金で地元の農村舞台で芝居が上演できたという。

国指定天然記念物 神明社の大シイ

西尾市上永良町宮東11


上永良神明社の創立は、貞観年中(859~77)と伝えられ、寛永2年(1625)本殿の再建には、秀吉と家康に仕えた後に伊予国(愛媛県)松山の城主となった加藤左馬之助嘉明がこの地の出身とされるため特に力を注いだ。嘉明は神職らに「加藤」の性を与えたといわれ、境内には生誕地の石碑がある。昭和7年に国の天然記念物に指定されたスタジイは、樹高8m、根周20mで樹齢千年と推定され、県下最大の古木といわれている。主幹は枯死し、2本の枝幹と周囲に萌芽したひこばえが繁殖している。


愛知県指定天然記念物 八柱神社の樟


豊田市畝部東町川端


社殿東側に立つ八柱神社の樟は、幹周17m、樹高20mで樹齢は約千年といわれている。幹の根元は瘤状に膨らんで盛り上がり、特異な樹形をしている。この原因は不明だが、地下水位と関係するともいわれている。言い伝えによると、弘法大使が三河を巡錫した際に植えたといわれ、神社の御神木として幾多の人々を見守ってきた。


取材場所
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