シュールで毒っ気のあるヨーロッパアニメが気になります。(Airi Nakano)

絵でも写真でも毒っ気を孕んだポップなものが昔から好きなのですが、近頃その興味の矛先がヨーロッパアニメにも向かっています。中でも好みはフランスとチェコ。本日は、私がお勧めする&公開を心待ちにしている4作品をご紹介します。
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Photo: Album/AFLO

私的・好きなアニメの殿堂入り!『ファンタスティック・プラネット』(1973)

公開から40年以上経つ今なおカルト的な人気を誇るフランスとチェコの合作アニメ『ファンタスティック・プラネット』。フランスアニメ界の巨匠、ルネー・ラルー監督が手がけた本作は、1973年のカンヌ映画祭でアニメ作品史上初となる審査員特別賞を受賞したという、歴史を変えた名作です。

舞台は巨大なドラーグ族が小さなオム族を虫ケラのように扱う、とある惑星。ある日偶然ドラーグ族の1人がペットとしてオム族の赤ちゃんを飼ったことをきっかけに互いの部族の運命が変わり始め...。

ここで登場するオム族の見た目が完全に人間と一致しているということもあり、鑑賞後には夢に出てきそうな少しトラウマチックなビジュアル&ストーリー。ですが、他の追随を許さない圧倒的なセンスは、この作品に出会えたことを感謝したくなるほど。 観ている者の不安をさらに煽る、アラン・ゴラゲール手がける不穏な音楽もまた、秀逸です。 

この作品は切り絵アニメを使用しており、リアルな絵を一枚一枚背景の上に置いて撮影しているのだとか。制作期間にはなんと4年もの月日を要したというので、その手の込み方はもはや想像を絶します。 

私の中では永遠に殿堂入りのこの作品。 (DVDもamazonで購入してしまいました)シュールな作品がお好みの方にとってはたまらないものだと思いますので、是非とも一度ご鑑賞くださいませ。

絵で語る、温かくも切ない物語『ベルヴィル・ランデブー』(2002)

続いてご紹介するのは、第76回アカデミー賞で長編アニメ映画賞と歌曲賞にもノミネートされた、シルヴァン・ショメ監督のアニメ『ベルヴィル・ランデブー』。

この物語は、第二次世界大戦後のフランスを舞台に展開されます。主人公である"おばあちゃん"が、フランスの自転車大会、ツール・ド・フランスの最中にマフィアに攫われた孫のシャンピオンを救うために奔走し......。

何と言ってもこの作品の魅力は、極端なまでにデフォルメされた絵や、シックなカラートーン。他の作品ではなかなかお目にかかれない、独特な洒落っ気を漂わせます。(ちなみに私のお気に入りは、四角い形をしたマフィアと、レストランシーンで登場する痛烈なまでにデフォルメされたウェイターです。)

また、全体を通してセリフがほとんどなく、絵と音楽だけで語る作品なので、国境を越えて楽しむことが出来るのも素敵なところ。そしてまた、この音楽もこの映画の大事な要素となっています。フランスらしい皮肉めいたユーモアを随所に散りばめつつも、その根底には人間に対する深い興味と愛情を感じさせる本作。孫のために奮闘するおばあちゃんの心温まる話...でありつつ、鑑賞後には切ない余韻を残します。

シュールなミュージカルアニメ『スーサイド・ショップ』(2013)

 続いては『髪結いの亭主』などで知られるパトリス・ルコント監督による初のアニメーション映画『スーサイド・ショップ』。一体どんなお話なのか、題名だけではなんとも想像し難いかと思いますが、舞台はその名の通り”自殺用専門店”。設定からして既にもうシュールな匂いがぷんぷんです。

店を営むのは両親も子供も揃って超ネガティブなツヴァイク一家。ところがなんと、超ポジティブな末っ子のアランが生まれてきてしまったことにより、お店はバランスを崩し始め.....。

自殺する人々を描きながらも音楽はシャルル・トレネの「喜びあり」だったり、なんと主人公である店の主人の名前がミシマだったり(長女はマリリン)と、ブラックユーモア満載。ですが、あくまで込められているのは生きることへのポジティブなメッセージです。

ミュージカル仕立てで絵もダークながらもポップなので、老若男女を問わずトライしやすいはず。是非一度、気軽に手に取ってみてはいかがでしょうか?

今、一番完成が楽しみな映画『蟲』(2018年完成予定)

シュールなアニメ映画と言ったら、忘れてはならないのがチェコの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルです。実写・アニメと共にCGを一切使わず、ストップモーションを使用。徹底的にアナログ主義を貫いたその唯一無二の世界観は、ティム・バートンなどにも影響を与えたと言われています。

『アリス』や『オテサーネク』などの代表作で知られる彼の作品を特徴づけるのは、キッチュでグロテスクな表現。もしかすると一見苦手と思われる方もいるかもしれませんが、作品の持つ深いメッセージ性や、そのあまりにも突き抜けた感性は、観れば観るほどに虜になっていきます。

そんなヤン・シュヴァンクマイエル監督も、御歳81歳。現在、最後の作品になるかもしれないと発言し、2018年の完成に向けて新たな長編映画『蟲』に取り組んでいます。

驚くことに、彼がその歴史に残るであろう長編作品の資金を調達するために選んだ手段は、なんとクラウドファンディング!資金不足と聞き、思わず私も人生で初めてクラウドファンディングに協力してみました。2年後に無事公開することを祈りつつ、今から完成をとても楽しみにしています。

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