最近急速に伸びている研究分野の1つが「ポジティブ心理学」です。より良い子育てや、人が活躍できるようにするために、どのような指導をすればいいのか研究しています。これについて学ぶ必要がありそうな経営者や管理職はたくさんいます。賞賛や感謝でやる気を出させることはできても、批判ではほとんどやる気は出ない、というのは事実です。アメリカには、やる気を出させるための演説家、モチベーショナルスピーカーという人たちがいます。モチベーショナルスピーカーのSean Coveyさんが、ブリガムヤング大学でアメフトのクォーターバックをしていた時、お父さんのStephen R. Coveyさんは彼のプレーを見るために、海外出張から急いで戻ってきていました。

当時のことを思い出しながら、Coveyさんはこんな風に言っています。

私がひどいプレーをしたゲームの後、父はロッカールームの外で私のことを待っていました。私が外にでると、父はハグをしながら「ショーン、今日はすごく良かったぞ」と言いました。私が「違うよ、父さん、今日は今までの中でも最悪のゲームだったよ」と言うと、「いや、お前は頑張っていたし、前進し続けてた。父さんはお前をこんなに誇らしく思ったことは無かった」と言いました。

これで気分が救われました。子どもに話をする時は、最初に私の父がしてくれたみたいに、いつも子どもの個性を認めるようにしています。父は私のことを信じてくれて、とてもポジティブでした。だからみんなが父のそばにいるのだと思います。

なんと素晴らしいお父さんなのでしょうか。しかし、これはビジネスにおけるリーダーにも言えることだと思います。

これまでの人生で、スポーツチームのコーチがこんな風に子どもを叱っているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。「もう一度ボールが投げれるとでも思ったのか?(チャンスは一度だぞ)」「他の子は、お前より小さいのにできてるじゃないか!」

選手にやる気を出させるのがコーチの仕事だということを理解していないコーチは最悪です。ダラス・カウボーイズのコーチだったTom Landryのようなやり方が良いと信じています。「私は選手をそんなに褒めたりしないが、私が"よくやった"と言う時は、選手はその意味を理解している」

約1世紀ほど遡りますが、ポジティブの効能を証明している研究では、1925年にElizabeth Hurlock博士が、4〜6年生の算数のクラスで異なる対応をしたら、それぞれどのような影響があるか実験していました。

あるグループは褒められ、別のグループは批判をされ、もう1つのグループは完全に無視をされます。実験2日目〜5日目に、算数の問題が解けた数をグループ毎に計算しました。2日目という早い段階から、褒められたグループの生徒は、批判されたり、無視されたりした生徒よりも、驚くほど成績が良かったのです。研究の間に、解けた算数の問題の数は71%も増加しました。一方で、批判されたグループは19%、無視されたグループはたった5%しか増加しませんでした。

結論は、褒めるのは批判するよりも良く、無視するよりもはるかに良いということです。褒めることは相手に力を与えますが、批判は相手を怯えて黙らせます。無視するのは困惑させます。

もちろん、お世辞のように闇雲におだてるのは良くありません。試合に参加したからと言って、すべての子どもにトロフィーを与えていては、子どもは成長しません。しかし、たとえ負けた試合でも、一生懸命がんばったとか、前に進もうとしていたというような、正当な褒め方であれば、これは大いに効果があります。

すべての上司や管理職に仕事で活用して欲しいスキルです。

Chester Elton and Adrian Gostick (原文/訳:的野裕子)

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