別れ。 | 旬の言の葉

旬の言の葉

俳人 大高 翔のブログです。


村重さんは、
「俳句王国」制作の第一線を退いたら俳句を詠む、
と、かねてから宣言していた。

昨年2013年11月に出された、村重さんの句集。

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句集『からからころと』村重 蕃(むらしげ ばん)著

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最後にお会いしたとき、句集に書いていただいたサイン。

この絵も、村重さんによるもの。
今は亡き愛犬「ばん」。
おだやかな性格で、
お宅におじゃました際、「ばん」ちゃんは、
畳の部屋のふかふかの座布団の上に、
この絵と同じ姿で、じっと寝そべっていた。


句集の一句目は、
村重さんにわたしがいただいた贈答句だ。

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今から十年前、三月下旬の雨の日だった。
松山から徳島まで、車で片道三時間かけて、
奥様と来てくださった。
あの日の村重さんの笑顔を、ずっと覚えていようと思う。

村重さんは、
NHKで数々の名番組を世に送り出し、
なかでも、「俳句王国」という長寿番組を生みだし、
育てあげた敏腕プロデューサーだった。

でも、わたしにとっては、それは、大きいけれど、ひとつの側面でしかない。
傲慢な言い方だと思うけれど。
わたしには、かけがえのない「松山の父」だった。

人と人がほんとうに関われた時、
相手に望むことは、たったひとつなのかもしれません。
その人がその人らしくあること。

村重さんが命がけで教えたくれたことだと、
いま、ひしひしと思っています。

==========2014/4/11掲載==========

昨日、愛媛に伺い、村重さんにお別れを言ってきました。

明るすぎる春の日差し。
時折吹く冷たく強い風。
桜の木が放つ、最後の一片。
風景のなかに、村重さんを探しました。

さようならはうまく言えませんでしたが、
頬にすこし触らせてもらって、
たくさんの感謝を伝えてきました。

村重さん、お会いできて、わたしは幸せ者でした。
ほんとうにありがとうございました。