パーソナルファイナンスの専門家は、非常時のために貯金をしたほうがいいと言う人もいれば、住宅ローンを早く返済したほうがいいという人もいて、すべてに同意できるわけではありません。しかし、いろいろと意見は違っても、ほとんどの人が同意するパーソナルファイナンスの基本が、少なくとも5つあります。

お金を管理するのが難しいように思えるのは、「収入の10%は貯金しろ」「いや15%だ」「利率の高いクレジットカードの支払いが先だ」「1番少ない借金を返せ」など、アドバイスが人によって違うからです。しかし、パーソナルファイナンスというものは、本当はとてもシンプルです。売れている本を読んだり、金融の専門家による昔ながらのアドバイスを聞いたりしたあとは、いくら使って、いくら貯めろというようなアドバイスは、枝葉の部分で争っているだけだということに気付きます。

アドバイスをまとめると、経済的に自立するためにお金を使い、自分のお金がどこに消えているのかを知り、多額の借金はせず、複利の力を利用するということに落ち着きます。今回は、そのようなお金に関する基本事項をおさらいしておきましょう。

1. お金は経済的に自由になるためのツールにすぎない

まずは、誰もが同意することでありながら、なかなか語られないことについて言いましょう。「お金はただのツールだ」ということです。

できるだけ早くお金を貯めることをすすめている『成功の掟』のような本や記事を読んでも、このようなことは考えないかもしれません。しかし、パーソナルファイナンスの専門家が本当に言いたいのは、ただお金を貯めるだけではなく、経済的に自由になるためにお金持ちになろうということでしょう。

足かせになっている借金から自由になり、常にお金の心配をしなければならないことから自由になり、自分と家族の基本的な必需品や快適な生活を手に入れるために自由になりましょう。お金はそのためのツールです。

今、お金に関する厳しい選択をすれば、後に経済的に自由になれます。『I Will Teach You To Be Rich(豊かになる方法教えます)』の著者ラミット・セティは、パーソナルファイナンスがどのようなものか、ほとんどの人が気にしていないと言います。お金や人生に関する基本的な大前提の1つに、お金は人生のエネルギーというものがあります。自分のエネルギーや時間をお金と交換しているので、お金は賢く管理しなければなりません。

無目的にお金を使ったり、大切なことにお金を使わなかったりすると、お金から縁遠くなります。

2. お金を貯める唯一の方法は「稼ぐ以上に使わないこと」

多くの金融の専門家による意見の中でも、ほぼ一致する明確な事実とは「稼ぐ以上に使ってはいけない」ということです。稼ぐほうに、より重きを置く人は「使う以上に稼げ」と言い換えることもありますが(たとえば、安売りのものを探すのではなく、収入を得る機会を見つける)、いずれにしても同じことです。経済状況を改善する、もしくは予算内に収める唯一の方法は、収入と支出の差をできるだけ大きくすることです。つまり、自分の財力の範囲内で暮らすということです。そして、余分なお金を借金返済に充てたり、将来のための貯蓄に回しましょう。

画期的なアドバイスではありませんが(しかも問題を抱えている人には役に立たないかもしれませんが)、これがお金に関する真実であり、誰もが同意する大原則です。しかも、どれだけ収入のある人でも従うべきことです。

『The Millionaire Next Door』という本では、高収入の人ほど、稼ぐ以上にお金を使ってしまうと書いてあります。しかし、収入が多くても貯蓄が多いわけではありません。億万長者になるような人は、収入と支出の差を気にしています。

収支の差を大きくすることでしか、非常時用の貯蓄をしたり、借金を返済したり、子供の教育資金を貯めたりすることはできません。お金に関するすべてを教えるとうたった本を買って、この大原則が載っていなかったら、お金を返してもらったほうがいいです。

さまざまなパーソナルファイナンスの本などに、お金を貯めたり支出を減らしたりする具体的な方法が載っているかもしれませんが、誰もが同意するベストな方法はありません。結局、常に基本となるのは「稼ぐ以上に使わない」ということです。

3. お金がどこに消えたのかわからないなら、無駄遣いの可能性大

「稼ぐ以上に使わない」というのはとても簡単なことなのに、どうしてできない人が多いのでしょう? 筆者も昔は「予算を管理するのはすばらしいことだけど、それはいつかやろう」という人間でした。仕事のように自分の支出を記録し始めるまで、赤字になるのがどれくらい悪いことか理解していませんでした。

これは体重の管理と同じようなことです。痩せたい(もしくは体重をコントロールしたい)なら、毎日体重計に乗って、何を食べたか意識しなければなりません。体重や支出を記録しない人は多いです。

金融の専門家は、予算を管理することが人々にとって良いことかどうか、まだ考えています。しかし、パーソナルファイナンスの本では、少なくとも毎日の支出を記録することから始めましょう、とアドバイスしていることが多いです。稼いだお金は実際どこに消えているのでしょう?

前述のラミット・セティの本に載っているプログラムの、最初のステップは「お金を何に使っているのかを知る」ことです。ほかのパーソナルファイナンスのプログラムでも、最初に支出を記録することから始めます。1円まできっちりと記録する必要はありませんが、記録することでお金をどのように使っているのか把握できます。『Mint』のようなアプリを使えば、毎日自動的に記録してくれるのでとても簡単です。

4. 借金の罠にハマらない

パーソナルファイナンスの専門家は、借金をしないように、借金のある状態を続けないようにと言います。どんな借金もダメだと言う人もいれば、住宅ローンを除くという人もいたり、クレジットカードのキャッシングのような、利率の高いものは避けようという人もいます。いずれにしろ、借金は良いものだと考えている人はいないと言っていいでしょう。

『バビロンの大富豪』というストーリー仕立ての成功哲学書は、自分の財力以上のぜいたくな生活をして、借金を抱えている青年の話です。結局青年は奴隷として売られてしまいます。そして、奴隷の生活から脱出した青年は、収入の2割を借金返済に充て、1割を貯蓄に回し、残りの7割で生活することに決めました。この本は1926年に出版されたものですが、何十年もたった今でもこのやり方は通用します。

高利の借金がある場合は、それを返済することが経済的には最善の選択です。専門家は、「高利のものを最初に返済すべき」や「1番少額のものから返済すべき」、「貯金する前に返済したほうがいい」などと、それぞれ違う意見を持っています。しかし、借金が良いか悪いか、利率がどうかはさておき、返済するに越したことはありません。

5. 複利はこの世で最強の力になる

金利というのは、ほとんどの場合数パーセントなので小さなものだと思うかもしれませんが、パーソナルファイナンスではかなり重要な要素になります。金利は自分が生かすときも、ダメージを受けるときも、大きな力を発揮します。だから、高額な借金をしてはならず、お金を投資したほうが良いのです。

たとえばクレジットカードの場合、残高を繰り越すとすぐに経済的に身動きが取れなくなります。(日本のクレジットカードの場合リボ払いなどによくある)セティはこのように言っています。

お店でカードをスワイプするだけで支払いができるのは便利だと思うかもしれませんが、期日までにきちんと支払わなかった場合、最終的に思いもよらないほど借金をすることになります。たとえば、250ドルのiPodを買ったときにクレジットカードを使って、年利14%の利率で、最低支払額4%で、毎月最低額しか払わなかった場合、合計金額では約20%以上支払うことになります。

一方、金利の高い銀行口座(預金プラン)にお金を入れていれば、複利の力でお金はさらに増えます。20代のときに1ドルを年利平均8%で30年間積み立てたとしたら、50代で10ドル積み立てるのと同じことになります。「お金を働かせる」には最高のやり方です。

ウォーレン・バフェットも含め誰もが、できるだけ早く貯金をするようにすすめている理由です。デビッド・ラムジーは著作『The Total Money Makeover』の中で、「まずは自分のために投資しなさい」と言っています。

40歳以上の私たちが声を合わせて、40歳以下のすべての人に言いたいのは「今すぐ投資しろ!」です。

システマティックに、継続的に投資すると将来裕福になれます。あまりコツコツと取り組まず、投資よりも大事なものがあるのだとお金を使っていたら、65歳以上になっても働かなければならない、54%の中の1人になります。投資は、『うさぎとカメ』のようにノロマなカメが競争に勝つようなものです。継続することで複利の効果が良い意味で爆発します。

上記の5つは、誰もが納得するとてもシンプルで基本的なお金の大原則です。お金に関するアドバイスは大体同じものになりがちですが、パーソナルファイナンスについて勉強を続けてください。決しておろそかにしてはいけません。あるアドバイスがほかのアドバイスよりも心に響くかもしれません。ある戦略や計画が、ほかのやり方よりも魅力的に思えるかもしれません。

しかし、経済的な成功というのは、金額だけでなく、心の豊かさでもあるということを覚えておいてください。お金のことをよく知っている人は、お金のことばかり考えていないものです。

Melanie Pinola(原文/訳:的野裕子)

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