PickTheBrain:新しい言語を学ぶ利点を指摘する研究はたくさんあります。それなのに、2〜3言語を流暢に話せる人はとても少ないのが現状です。大人になると言語自体に興味がないと新しい言語を勉強しようとは思いにくいし、ある年齢に達すると新しい言語を学ぶのは不可能だという間違った考えがあるからかもしれません。

しかし、朝飯前とは言いませんが、ほとんど誰でもほんの少しのモチベーションと勤勉ささえあれば新しい言語を学ぶことができます。今回は、科学に裏付けられた「新しい言語を学ぶ8つのメリット」をご紹介します。

1. 母国語が進歩する

新しい言語を学んでみて初めて自分の母国語のルーツと基本的構造の素晴らしさがわかります。

これは、母国語を話しながら成長するときは文の構造がどのような働きをしているかとか各音節のアクセントを分析することが無いためです。『Impact of the Second Language Education(第二言語教育が及ぼす影響)』によれば、第二言語を勉強するだけで、第一言語の文法、語彙、話し方のスキルが目覚ましく進歩します。

これは、今までずっとバスケットボールをしてきた人が、バレーボールのやり方を学びそのスキルをバスケットボールの試合で生かすのと同じようなものです。つまり、「少なくとも2つの言語を理解するまでは、決して1つの言語を理解できない」ということです。

2. 集中力が高まる

オンラインジャーナルの『Brain and Language(脳と言語)』に発表された研究では、複数言語を話す被験者が言語理解のタスクをこなしている際に、彼らの脳をfMRI(機能的磁気共鳴画像)で観察しました。

この結果、複数の言語を話す人は1つしか話さない人より競合する単語をふるいにかけるのが上手いことがわかったそうです。競合する単語を排除するこの能力は、気が散る環境でも特定の作業に集中できる、という利点があります。

3. よくある脳の病気を予防する

老化は誰も免れることができません。

脳に関して言えば、外国語の学習はアルツハイマー病や認知症の予防になるか、発症を4.5年遅らせることができます。これは最も効果のある薬でも6〜12か月しか症状を遅らせることがないのに比べるとはるかに強力です。

米国神経学学会は2つ以上の言語を話すと脳の中の神経経路を増やすことになり、それにより情報処理をするチャンネルの数が増加することを示す研究を発表しています。

4. 数学のスキルが向上する

2007年にマサチューセッツ州で精力的な研究を行った合衆国外国語教育協議会は次のような発表をしました。

「外国語を学習する子供たちは、たとえこの第二外国語学習のせいで数学の勉強の時間が無くなっても、学校時代は外国語を勉強せず数学の授業を多く受けている学生より優れた成果を挙げています」

ミシガン大学言語学習誌に発表されたArmstrong氏とRogers氏の1997年の研究では、外国語を週に90分だけ1学期間勉強した学生は数学と国語で著しく高い点数を取っています。

後からわかったことですが、新しい言語の構造を学ぶことは論理的で構造的な思考を必要とするので、これは理に適っています。言語学習における記憶術のような記憶のテクニックも数学で大きな役割を果たしています。使用頻度の高い複雑な数式を記憶する必要があるからです。

5. あらゆる学習が速くなる

2007年にマサチューセッツで行われた同研究では、言語学習を通した「認知障害解決のエクササイズ」は何を学習する場合にも直接適用できるという結論に達しています。

記憶力も新しい言語を学習すると向上します。より多くの情報を吸収して記憶することが学習曲線を著しく短くします。以前見たことがあるものを学習しなおすのではなく新しい情報を学ぶことにより多くの時間を費やすことになるからです。

最後に、学びには注意散漫になることが避けられないので、マルチタスキングをしても集中できる能力がある人の方が有利です。二か国語を話す人は普通の人よりマルチタスキングをすることに優れているという研究報告があります。

6. 外交的になり人に好かれるようになる

言語学習は新しい言語を話すことだけではなく、新しい文化を体験することでもあります。

第一の理由は、外国の人と会うことが言語学習の核心に組み込まれているということです。学習中の新しい言語の練習をして上達するためには、その言語を母国語として話す先生(あるいはスカイプで指導するコーチ)について勉強して、会話を交わしたり、その言語を使う集まりに出席する必要があります。これは自転車の乗り方を学ぶとき動画で見る代わりに実際に自転車に乗る必要があるというのと同じようなものです。当然と言えば当然ですが、外国人と話すことは外国語学習過程の一部なのです。

外国語で話すことで得られる体験は、人と会って話す経験と基本的には同じです。外向的で社交的になるスキルは人生の別の分野にも直接転用可能です。

一番重要なのは、言語学習は自分とは異なる他人の立場になって考えたり全く異なるものの見方で世界を見ることになることです。従って、他人に対する共感力が発達します。

世界中の人々の間で起こる揉め事の大半は相手の立場の理解が欠けていることから来ています。新しい言語を勉強することは、他人を理解するのに役立つのみならず、それにより得られる文化的知識が親近感を強めるのにも役立ちます。

7. 創造性が倍になる

新しい言語を話すと、使い慣れていない言葉で物事を考えないといけないことがよくあります。

しっくりきて他人に意味が通じるような文を1つ作るためにしばしば言葉を集めてパズルのように合わせる必要があります。それにより枝分かれ的な思考のスキルを向上させて、問題に対して複数の解決策を着実に考える訓練をすることになります。

この「枠にとらわれない」試みを実践していることが、多言語を話す人の方が単一言語を話す人より創造性が高いと研究者が結論付けた理由です。

8. 自信が高まる

何かを成し遂げようとして成功すると、それがどんなに小さな成功であろうと自信のレベルが高くなります。

ネイティブスピーカーと30秒だけ会話ができることでさえ、自信がぐっと強くなります。なぜならば、前にはできなかったことができたからです。

この「そうだ。自分にはできる!」という物の考え方は、自分の個人的なマントラとなり、人生で達成したいどんな目標にも応用できます。

『Lean Forward』の著者であるEric Holtzclaw氏は「物の見方のささやかな変化であっても、臆病さから引っ張り出して次の挑戦を受けて立つために必要な後押しをしてくれる」と言っています。

7 Surprising Benefits of Learning a New Language (Backed by Research) |PickTheBrain

Sean Kim(訳:春野ユリ)

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