ドローンやVR(ヴァーチャルリアリティ)など、巷で話題になっている最先端のテクノロジーをライブ演出に活用する動きが進んでいる。中でもドローンは屋外での飛行が制限されるようになったこともあり、屋内や限定されたエリアでの利用を中心に、エンタテインメント市場での活用が進むと見られている。
ドローンはあらかじめ動きをプログラミングできることから複数機を組み合わせた利用にも適している。フランスのドローンメーカーのパロットでは、今年のCES(国際家電見本市)会場で、複数の異なるタイプのドローンを飛行させるデモを行い、ダンスカンパニーのELEVEN PLAYでは、ドローンを使ったダンスインスタレーションを発表した。また、オランダでは王立空軍の協力による本格的なドローンサーカス「AIR」を年内に開催すると発表して話題になっている。このほか、ディズニーがドローンを使って巨大なあやつり人形を空中で動かす特許を取得しており、近くテーマパークで披露されるのではないかと期待されている。ディズニーでは3Dプロジェクションマッピング技術を使ったテーマパークのリニューアルも進めており、同様の動きは世界でも広まりつつある。
こうした最新技術を組み合わせたライブ演出としては、日本の映像クリエイティブ集団ライゾマティクスが、今年のSXSWに出演したPerfumeのライブ映像をリアルタイムに加工してオンラインで配信したことが大きな話題となった。会場ではプロジェクションマッピングと照明のみの演出だったのが、配信された映像では、あらかじめ綿密に作成されたメンバーや会場の3D スキャン映像を組み合わせ、リアルなライブ映像と、時空を超えたバーチャルの世界をシームレスで行き来する演出となっており、AR、VR技術を用いたエンタテインメントの新たな方向性を示すものとなった。
そして、これから最も市場が拡がりそうなのがVRを活用した演出だ。他の分野に先んじてゲーム市場で採用が進められていたが、最近では新しいライブシーンの創造に向けた開発も進んでいる。その1つ、ロート製薬では目薬のパッケージキャラクターに採用した初音ミクのVRライブコンテンツ「ALIVE」を制作し、それと同時に10人が同時に楽しめるシステムを発表。さらに、スマートフォン向けにデバイスの動きに合わせて視界が変わるARバージョンを開発し、オンラインで配信している。
このようなライブ演出は「シネマティックVR」と呼ばれ、映像とともに立体的な音響が提供できるのが特長だ。ポール・マッカートニーのライブをステージの中に入って楽しむといったコンテンツも公開されており、今後のそうした需要に合わせたハイスペックなHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の開発が、マイクロソフトをはじめ、サムスンやソニー、Facebookが買収したオキュラス・リフトなどで進められている。
少し変わったところでは、HMDを使って、図書館でライブを楽しむ「無音フェス」というイベントが話題になったことがあるが、このように場所を選ばずどこでも楽しめるVRライブは、これから定番イベントとして拡がるかもしれない。
(文/野々下裕子)
(ORIGINAL CONFIDENCE 15年6月1日号掲載)
ドローンはあらかじめ動きをプログラミングできることから複数機を組み合わせた利用にも適している。フランスのドローンメーカーのパロットでは、今年のCES(国際家電見本市)会場で、複数の異なるタイプのドローンを飛行させるデモを行い、ダンスカンパニーのELEVEN PLAYでは、ドローンを使ったダンスインスタレーションを発表した。また、オランダでは王立空軍の協力による本格的なドローンサーカス「AIR」を年内に開催すると発表して話題になっている。このほか、ディズニーがドローンを使って巨大なあやつり人形を空中で動かす特許を取得しており、近くテーマパークで披露されるのではないかと期待されている。ディズニーでは3Dプロジェクションマッピング技術を使ったテーマパークのリニューアルも進めており、同様の動きは世界でも広まりつつある。
こうした最新技術を組み合わせたライブ演出としては、日本の映像クリエイティブ集団ライゾマティクスが、今年のSXSWに出演したPerfumeのライブ映像をリアルタイムに加工してオンラインで配信したことが大きな話題となった。会場ではプロジェクションマッピングと照明のみの演出だったのが、配信された映像では、あらかじめ綿密に作成されたメンバーや会場の3D スキャン映像を組み合わせ、リアルなライブ映像と、時空を超えたバーチャルの世界をシームレスで行き来する演出となっており、AR、VR技術を用いたエンタテインメントの新たな方向性を示すものとなった。
そして、これから最も市場が拡がりそうなのがVRを活用した演出だ。他の分野に先んじてゲーム市場で採用が進められていたが、最近では新しいライブシーンの創造に向けた開発も進んでいる。その1つ、ロート製薬では目薬のパッケージキャラクターに採用した初音ミクのVRライブコンテンツ「ALIVE」を制作し、それと同時に10人が同時に楽しめるシステムを発表。さらに、スマートフォン向けにデバイスの動きに合わせて視界が変わるARバージョンを開発し、オンラインで配信している。
このようなライブ演出は「シネマティックVR」と呼ばれ、映像とともに立体的な音響が提供できるのが特長だ。ポール・マッカートニーのライブをステージの中に入って楽しむといったコンテンツも公開されており、今後のそうした需要に合わせたハイスペックなHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の開発が、マイクロソフトをはじめ、サムスンやソニー、Facebookが買収したオキュラス・リフトなどで進められている。
少し変わったところでは、HMDを使って、図書館でライブを楽しむ「無音フェス」というイベントが話題になったことがあるが、このように場所を選ばずどこでも楽しめるVRライブは、これから定番イベントとして拡がるかもしれない。
(文/野々下裕子)
(ORIGINAL CONFIDENCE 15年6月1日号掲載)
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2015/05/31