2015年5月20日~22日に千葉県千葉市の幕張メッセで、ドローン(無人航空機/UAV)の技術と製品に関する展示会「第1回国際ドローン展」が開催された。日本でドローンを専門とする商業展示会が開催されるのはたぶん、これが初めてだろう。

「第1回国際ドローン展」の出展者数は約50社と、開催規模としては大きくない。むしろ非常に小さい。言い換えると、単独で展示会を開催できる規模には達していない。いくつかの展示会を束ねた「総合展示会」の1つとして、「国際ドローン展」は企画された。その総合展示会とは、日本能率協会が毎年1回、春から夏の間に開催してきた「TECHNO-FRONTIER」。出展者数の合計で500社前後、来場者数の総計で3万名程度の中規模展示会である。モーター技術の展示会やノイズ対策技術の展示会、電源技術の展示会、熱対策技術の展示会などを束ねたものだ。

主催者の日本能率協会によると、本年の「TECHNO-FRONTIER」、すなわち「TECHNO-FRONTIER 2015」の総出展者数は474社だった。そして3日間の来場登録者数は総計で3万2160名である。出展者数は前年の504社に届かなかったものの、来場登録者数は前年の2万8698名を上回った。

異様な興奮状態に包まれていた展示会場

その中で「第1回国際ドローン展」の出展者数は前述のように約50社で、全体の約1割強を占めた。これに対して来場登録者数は9307名と、全体の29%、つまり3割近くをも占めていたのだ。ドローン展を差し引いた来場登録者数は2万2853名。既存の展示会は前年に比べると20%減という大幅な来場者減に見舞われたことになる。実際、取材した20日水曜日の午後の時点では、展示会場の大半はそれほど混雑していなかった。

ところが、そんななかで来場者で異常に混雑していた一角があった。それが「第1回国際ドローン展」の会場となったエリアである。しかも来場者の熱心さがすごかった。いくつもの質問を次々と繰り出す来場者、スマートフォンで写真と撮影しまくる来場者、カタログを奪うように集める来場者と、会場は異様な興奮に包まれていた。

「第1回国際ドローン展」の会場風景。数多くの来場者が殺到して大混雑だった。撮影日は開催初日の2015年5月20日、撮影時刻は午後1時ころ

ドローンが拓く産業の可能性に強い関心

ドローンを、個人が所有して楽しむ「ホビー用」と、法人が所有して活用する「業務用」に分けて考えると、世間一般の関心を集めているのはホビー用であり、なおかつ一部の不心得者による「お騒がせ」が耳目を集めているようにも見える。

しかし「第1回国際ドローン展」の主役はホビー用ではなく、業務用である。にもかかわらず来場者が殺到し、なおかつ熱心に情報収集に励む様子から伺えるのは、「ドローンが拓く産業の可能性」に対する強い関心が存在することだ。展示会場の一角に設営されたセミナー会場は予約だけで満員となっており、この事実からも関心の高さが伺えた。

重量が61グラムと軽いホビー用ドローン

「第1回国際ドローン展」の主役は業務用ドローンではあるものの、ホビー用の出展が皆無だったわけではない。少ないながらも実機の出展があったので、まずは身近なホビー用の展示から紹介していこう。

ヨコヤマ・コーポレーションのTEAD事業部は、同社が開発したホビー用のマルチコプター(マルチローターヘリコプター)「ALIEN X-6 SYN-130C(ALIEN X-6)」を展示していた。

ALIEN X-6は外形寸法が全長200mm×全幅130mm×全高40mmときわめて小さく、重量が61グラムと非常に軽い。手のひらに載せられるサイズと重さである。200万画素の超小型デジタルカメラを標準で装備しており、動画と静止画の両方を撮影できる。プロペラ(回転翼)は6個あり、直径は56mm。バッテリは3.7V出力のリチウムポリマ二次電池で容量は520mAhである。飛行時間は約6分、操作可能な距離は約70m、操作用送信機は4チャンネル機で無線通信の周波数は2.4GHz、充電時間は約90分。価格はTEAD事業部のオンライン販売サイトで税別1万2800円である。

ホビー用の超小型マルチコプター「ALIEN X-6 SYN-130C」。全長200mm×全幅130mm×全高40mm、重量は61グラム。いくつかの外装色を選べる

「ALIEN X-6 SYN-130C」のデモンストレーション用キット。左手前が送信機、右手前がドローン本体。右上にはプロペラを保護するリングがある

重量が61グラムと軽いホビー用ドローン

同社のTEAD事業部は、中国のShanghai Elanview Technologyが開発したホビー用の小型マルチコプター「Cicada」も展示していた。Cicadaはプロペラを4個備えたマルチコプターで、外形寸法は全長238mm×全幅238mm×全高87mm、重量は235グラムである。標準装備のカメラは画素数が1600万画素と極めて多い。動画と静止画の両方を撮影できる。またカメラが撮影している画像を送信機で視認しながら操作する機能(FPV機能)を備える。

CicadaのバッテリはALIEN X-6の2倍近い、1000mAhの容量がある。バッテリの種類はリチウムポリマ二次電池、出力電圧は7.4V(2個のセルを直列に接続)。バッテリ容量が大きいことから、飛行時間は約15分とALIEN X-6よりもずっと長い。最大飛行速度は時速10km、最大飛行高度は100m、操作可能な距離は100mである。

中国のShanghai Elanview Technologyが開発したホビー用の小型マルチコプター「Cicada」

180度の魚眼カメラを標準搭載したホビー用高級ドローン

フランスのParrotは、同社が開発した最新のホビー用小型高級ドローン「Bebop Drone」を出展。Parrotはホビー用ドローンではすでに良く知られており、代表製品に「AR.Drone」がある。

Bebop Droneは、画角が180度の魚眼レンズ付き高解像度カメラを標準搭載していることを特徴とする。カメラの画素数は1400万画素もあり、極めて解像度が高い。動画撮影と静止画撮影の両方が可能であり、動画撮影の解像度は1920×1080画素(30フレーム/秒)、静止画撮影の解像度は4096×3072画素である。

Bebop Droneの外形寸法は全長28cm×全幅32cm×全高3.6cm、重量は400グラム。プロペラは4個。バッテリはリチウムポリマ二次電池で、容量は1200mAhである。最大飛行速度は秒速13m(時速46.8km)と非常に高い。操作信号の到達距離は最大で250m。スマートフォンあるいはメディアタブレットをコントローラ(送信機)として使用し、カメラの撮影画像を見ながらの操作(FPV操作)ができる。ドローン本体とコントローラの間はWi-Fiで通信する。無線通信の周波数は2.4GHzおよび5GHzである。本体の価格は税別で7万800円。

このほか「スカイコントローラ」と呼ぶ専用送信機も展示されていた。スカイコントローラを利用すると、無線通信距離が最大2kmにまで延びる。メディアタブレットあるいはスマートフォンをスカイコントローラに装着することで、操縦者は撮影画像を見ながら、コントローラのジョイスティックによって機体を操作可能になる。スカイコントローラと本体のセット価格は税別で13万900円。

ホビー用の小型ドローン「Bebop Drone」。画角が180度の魚眼レンズ付き高解像度カメラを標準搭載した

「Bebop Drone」の専用送信機「スカイコントローラ」。中央にメディアタブレットあるいはスマートフォンを取り付ける

(続く)