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目にも口にも美味しいものがいっぱい!エディターのストックホルム取材後記。

コミュニティ感覚を大切にし、最先端のクールを生み出すスウィディッシュ・パワーの秘密を探るべく、首都ストックホルムへと向かったVOGUE編集部の増田さをりと荒井現。VOGUE JAPAN4月号掲載「ストックホルム特集」の取材を通して2人が体験したストックホルムの魅力を、チャット形式でお届けします。

Best Season 取材をした11月中旬は、実は一番おすすめではない季節!?

荒井(以下A): 4月号のストックホルム取材のために2人でスウェーデンに向かったのが11月中旬。実は一番夜の長い季節でおススメではないらしい(笑)。午後の3時ですでに写真のような夜の世界が広がっていた!それゆえ光の存在感がある。インテリアでも光の使い方などが幻想的で美しかったよね。
増田(以下M): 私たちが泊まったホテル Lydmar は、ストックホルム一のスタイリッシュなホテルで、部屋から見る景色も最高。とっても美しい街だったね。北のヴェネツィアと例えられることがあるみたいだけど、ヴェネツィアとは違う静かな美しさがある港街だった。大都会にはない、人の温かみと優しさ、穏やかさ、物静かな人にある、特有のクリエイティヴィティに惹かれた。

Art アクネ ストゥディオのデザイナー、ジョニー・ヨハンソンと美術館へ。

A: いろいろな取材をしたけど、特に記憶に残っているのは、 アクネ ストゥディオズのデザイナー、ジョニー・ヨハンソンが連れて行ってくれたModerna Museet(ストックホルム近代美術館)。色々なアーティストの作品を紹介してくれたよね。色彩感や配色のバランスとか、アクネのクリエイションに通じるものがあったよね。本誌では別のカットが採用されたけど、ジョニーの背景にある黒と赤のスプラッシュペイントは、日本人画家シマモトショウゾウの作品。展示されているアートのセレクトも独自で面白かった!
M: 広々とした美術館の空間も気持ちよかった。それと美術館館長の話も興味深かった。
A: どんな話だったっけ(笑)?
M: 意外とシビアな現実を率直に語ってくれた。 人気があってもジェフ・クーンズのような大掛かりな展覧会をストックホルムに持ってくるのは、NYやロンドンのようなアートの中心地と違ってとっても難しいとか。 でも、あとからアクネ役員のミカエルが、そうはいってもあの美術館館長の彼、世界でも有名な実力派キュレーターだって言っていたね。
A: 日本と同様、アメリカや西欧から少し離れた場所に位置している、という意識がスウェーデン人も持っているよね。少しアウトサイダーな自意識を持っているというか。
M: 自分を客観視できるところもね。

Food 理想的なオフィス!銀行を改装したオフィスで、こだわりのランチに舌鼓。

A: ジョニーに案内されてアクネのオフィスにも行ったけど、とても興味深かった。 銀行を改装した重厚感のある美しいビルの最上階が、写真のような社員の食堂になっている。毎週木曜日は皆があつまって食べる、というのもユニークだったよね。
M: ランチをご馳走になったけど、予想に反して美味しかった。失礼! だってスカンジナビア料理ってオープンサンドのイメージだったから。 ここ4、5年でスウェーデンの食事情は急激に変わったって言ってたね。特にユーロ統合されてからいい才能がストックホルムに集まるようになったって。質の良い素材が手に入りやすくなったことと街全体の環境の良さが大きな理由だって教えてくれた。
A: うん、予想以上に美味しかったし見た目も可愛かったよね。新鮮なシーフードや魚型のパンとか。まさに北欧的な可愛らしさ!でも、作ってくれたシェフはタトゥーがたくさんの強面な男性だった!
M: アクネのシェフのキャリアは興味深かったね。そういえば、別の日にそばみたいなラーメンも食べたよね(笑)。あれはわたしたちにはちょっと疑問だったわね。

Cafe スウェーデン人は大のコーヒー好き、シーフード好き。

A:かなり、独自に解釈された日本食だったよね。あの味が「日本の味」として受け入れられてると思うと……(笑)。新鮮な素材も揃うし、シーフードが好きな国民だから、日本人シェフも今、ストックホルムに進出するいいタイミングかも!
M: そうね。11月の日照時間の短さに耐えられるなら(笑)。ストックホルムは今本当にレストランが充実してきていて、ヨーロッパの料理大会で優勝したシェフのレストランがあったり。そういった点でもやはり今、面白い都市なんだと実感した。
A: スウェーデン人は大のコーヒー好きだけど、食事やカフェの時間を通して食事やカフェを通して、コミュニケーションを密に取っているのが彼らの特徴だそう。ちょっとしたお茶の時間も、そこで意外と重要な話をしたりするから欠かせない、と現地で働く日本人が教えてくれた。
M: そいういうところも日本に似てる。飲みの席で話が決まったりとか(笑)。

Creators 人とのつながりを大切にする仲間意識が新世代のクリエイターの強み。

A:なかなか新参者が入りにくい環境といえるかもね。ユニークな香水ブランドBYREDOのベン・ゴーラムとスニーカーブランドEYTYSのマックス・シラーの関係もまさに。友人同士であり、ビジネス面でも細やかな情報交換を欠かさないコミュニティ意識の高さが印象的だった。あの2人とのディナーは、今取材の素敵な思い出のひとつ。
M:ずっとディナーしていたいと思ったくらい、とっても楽しいディナーだった。
A:案内してくれたのは、Sture Hof という老舗レストラン。オーソドックスなスウェーデン料理を堪能したよね!生牡蠣などのシーフードはどうだった?
M: 牡蠣好きの私にはたまらなかった! どういうわけか、パリで食べる牡蠣というよりNYで食べる牡蠣に似た味だった。まろやかだったのかなぁ。NYで食べる牡蠣に似た味だと感じたのは同じくらいの緯度で取れる牡蠣だからなのかしら?
A:マックスはトナカイのソーセージを食べていたよね。あと、お酒もたくさん飲んでいたのは驚きだった!

M:確かにお酒の量はすごかったね。水のように飲んでも酔っていなかったものね。トナカイのソーセージは残念ながらトライしなかった。クリスマスが近い時期に行ったから、サンタがかわいそうになったよねぇ(笑)。
A: しかもかなり大きかった!はるばる日本から自分たちを取材しにきた僕たちを、大切に扱ってくれる。そんな細やかな気配りや優しさ、仲間意識を感じさせてくれるひとときだった。それはアクネ ストゥディオのスタッフにも通じる人間味あるおもてなしだったよね。
M: スウェーデンも日本も地理的に北と東の果てに位置するから性格的に似ているところがあると思うというジョニーの話に妙に納得したなぁ。外れに位置するから他で起きていることに興味津々で結果的に好奇心が旺盛な人間が多くなり、積極的に世界を見ようと、どんどん外国へ出て行く。でも一人で飛び出して行くのではなくて、それぞれの経験をシェアして助け合うって言ってたね。あの話は新鮮だった。わたしたち日本人も学ばなくちゃと思った。

Meatballs 新旧の文化が共存する都市、伝統的なミートボールは予想以上の美味しさ!

A: 伝統的なスウェーデン料理といえば、ミートボール!肉好きな僕にはたまらなかった!
M: あれは美味しかった。どことなく懐かしい味。スウェーデンのおふくろの味なんだね。マックスがオーソドックスだけどオペラハウスのレストランが一番美味しいよって薦めてくれたお店だった。
A: スウェーデン人がなぜ魅力的なの?ということが常に念頭にあった取材だから、ミートボールにもそれの秘密隠されている気が(笑)。シンプルだけど素材の味がしっかりと引き立っていた印象。単なるミートボールの味ってだけでなく、シンプルで堅実なスウェーデン人が好むのも納得したよね。
M: そうね。伝統的なものもちゃんと守るという姿勢もあのミートボールに感じた。

Interior 絶妙なサイズ感の街、多すぎない人口が、独自の発展を生む。

A: とにかく、コレクションでも取材でも、訪れる国のご飯事情に関してはハズレなし!な僕たちだけど、今回も大満足だった。他にもスウェーデンといえばインテリアをはじめとしたライフスタイルも日本人の憧れだけど、やはり充実した街だった。滞在中で一番のお気に入り空間は、こじんまりとした高級ホテル「Ett Hem」のインテリアってところは、僕も増田さんも共通だったんじゃない?温かみがあって、居心地がよくて、よくみると色々なテイストの家具や食器などがあるのに、全体的にはすっきりと、品よくまとめられている感じ。
M: あのホテルの暖炉は北欧らしくて好きだったな。今回取材できなかったけど、自分でオークションハウスを経営していたアクネ役員のミカエルが言ってた、ここ最近人気が上がり続けている20-30年代のスウェーデンの家具にも興味が湧いた。シンプルだけど計算されつくした美しい曲線とか機能性の高さが特徴的という北欧家具。でも値段を聞いてちょっとびっくり。テーブルで、確か約5000万円とか言ってた。 福祉国家だからとはいえあの物価の高さには驚かされたね。話はインテリアにもどるけど、冬の日照時間が短いせいか、ライティングの使い方がとても工夫されていてオシャレだった。キャンドルの使い方も含め!それからムートンの敷物なども。絨毯、毛布、ベッドカヴァー、ソファーやクッションカバーなど要所要所にうまく取り入れていて、全体的に温かみを感じるインテリアになっていたのはさすがだと思ったな。
A: 幻想的だったよね。家でどう心地よく過ごすかが徹底されて考えられている感じだった。冬に家にこもってさまざまな考えごとをすることを、スウェーデンでは「Snow In」するってジョニーが教えてくれたよね(笑)。インテリアをはじめとして、カルチャーも古いものと新しいものが静かに、すっきりと共存しているのがスウェーデンの魅力だと感じた。
M: そうね。娯楽もあまりないせいか、とにかく家に籠ることが多いって。その結果いろいろなことを考えて作り出す。クリエイティブな環境はどの都市よりも良いって、一年のうち200日を外国で過ごしているBYREDOのペンが言ってたね。
A: 時代が進化したとしても、古いものを捨てるのではなく、さらに大切にしていく。。。本や写真集が生活に身近な印象をうけたのも、なんだか僕たちが忘れかけているライススタイルをみたようで、ちょっと感動しちゃったな。
M: そして好奇心の旺盛さ。それが彼らのクリエイティヴィティの原点なのかもね。
A: 今度はベストシーズンに行きたいね!四季の変化が豊かな国だから、スウェーデンのちがった魅力を自分の眼で確かめたい!
M: 次は白夜の時期に行ってみたいね。太陽の恵みを目一杯楽しむ方法を学べそう!

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