話題の書『人口激減』著者・毛受敏浩氏が語る 「人口激減国家・日本は移民を受け入れるしかない」

「地方創生」に国際的視点を!

---何が問題でしょうか。

毛受 移民に対する国の方針がないことです。国が移民受け入れについて明確な方向性を打ち出さなければ、自治体の腰も定まりません。日本にはたくさんの日系ブラジル人が居住していますが、彼らを今後どうしていくのか。日本語教育も職業訓練もきちんと受けさせず、自治体の場当たり的な対策任せになっています。

かつて、1970年代にベトナム難民を受け入れた自治体の話を聞きました。いまでは退職して高齢者になった難民たちは、ほとんど全員がいまだに日本語が満足にできず、今は生活保護を受けているというのです。日本語教育を満足にやらせなかったために、底辺の仕事しか就けず、結果、財産もできずに生活保護になったのです。そうした失敗を繰り返してはなりません。

---安倍首相は「いわゆる移民政策は取らない」と国会で答弁しています。

毛受 国の方針として、移民の受け入れや外国人との共生をメッセージとして出すことが非常に大事です。国際的にもおおきなインパクトがあります。日本人の意識改革にもつながるでしょう。安倍内閣は「地方創生」と言い、地方の人口減少に歯止めをかけると言っていますが、そこに国際的な視点はまったく欠けています。

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地方の人口減少は、地域の文化や伝統を支える人がいなくなることを意味します。地方の人口が減っている地域に外国人を受け入れていく。そこで高齢者の見守りに従事してもらう。そういった外向きの視点が必要です。

---外国人が増えると治安が悪化すると危惧する人たちも少なくありません。

毛受 今、外国人観光客が大幅に増えています。私はそれによって犯罪は増えると危惧しています。しかし、移民を正規に受け入れたからと言って犯罪はまず増えません。例えば、外国人労働者として6年働き、無犯罪などの条件をクリアすることで定住許可が得られる仕組みになれば、早く定住権を得ようと模範的な社会人として振る舞うようになるはずです。

日本の人口減少は大津波のように襲ってきます。おそらく外国人移民を受け入れても、それで問題のすべてが解決するわけではありません。移民のマイナス面を強調するよりも、人口減少で社会が壊れていく悲惨さに思いを巡らせて危機感を持つべきです。何よりも移民論議をきちんと始める時だと思います。

毛受 敏浩(めんじゅ としひろ)    1954年生まれ。慶応大学法学部卒。米国エバグリーン州立大学行政管理大学院修士。兵庫県庁で10年間の勤務後、1988年より日本国際交流センターに勤務。草の根の国際交流調査研究、二国間賢人会議、NGO、フィランソロピー活動など多様な事業に携わる。2003年より チーフ・プログラム・オフィサー、2012年より現職。慶応大学、静岡文芸大学等で非常勤講師を歴任。現在、東京都地域国際化推進検討委員会委員長、総務大臣姉妹自治体表彰選考委員、JICA草の根技術協力選考委員等を務める。2005年、第一回国際交流・協力実践者全国会議委員長。 著書に『人口激減-移民は日本に必要である』、『異文化体験入門』、『地球市民ネットワーク』、編著書に『国際交流・協力活動入門講座I~IV』など。

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